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御手洗潔シリーズ50作目! 最新書き下ろし長編!!  『屋上の道化たち』 島田荘司

『屋上の道化たち』 島田荘司

『屋上の道化たち』
著者:島田荘司
定価:本体2,000円(税別)

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~「御手洗潔シリーズ」50作目を迎えて~

 この作品がシリーズ50作目に当たるということは、書き上げてから東映広報に教えてもらい、はじめて知りました。ですから50作目のメモリアルという意識はまったくないままに書いてしまい、ちょっともったいなかったかな(笑)。作中のどこかに50という数字など埋めればよかった。100の時はやろうかな、生きていればだけれど(笑)。
 いつも最新作が最大自信作という気持ちなので、今回の『屋上の道化たち』も、全御手洗潔シリーズ中、ベストの衝撃性と思っています。
 新潮の長編を書いたばかりの昨年秋、編集者も恐縮して、250枚くらいの中編でいいですからという依頼だったのですが、書きはじめたら現れてくる連中が変てこな人ばかりで、閉口しながらも面白くてね。だからこちらも楽しんでしまって、提出して250枚はあるでしょ? と編集者に訊いたら800枚だと(笑)。おかげで巻末に、御手洗のバイオグラフィとか迷言集を付録に付けようという当初の計画がふっとんでしまって、それも読みたかったのにと、読者に文句を言われました。
 絶対自殺するはずのない男女が、「ウチは死にません」とはっきり宣言して屋上にあがり、何故なのか次々に飛びおりてしまう、その目撃まである。そういう「呪われた屋上」というホラーもどきがメインの謎ですが、ホラー小説ではないんです。本格らしい本格と自分では思っていますが、ヴァン・ダイン以降、こんな本格を書いた人間は、世界中にいないでしょうね。ファイロ・ヴァンスもフレンチ警部も、読んだら文句を言うかも。もっとまじめにやれと、吉本新喜劇じゃないんだぞと(笑)。
 1990年から1991年にかけて、わがバブル経済がピークに達した時期に起きた事件という設定なのですが、日本人の愚劣な威圧体質や隠蔽体質が、廻り廻って、こんな不可解な悲劇を引き起こすんです。いわば日本人に残っている古い体質が街を吹く風で、これが桶屋が儲かるようにして奇怪な事件を続発させる。かつて盛んに書いていた、日本人論の一環ともいえますね。
 ずっと脳裏に見ていたのが、屋上の頭上に残っている古ぼけたキャラメルの大看板。中距離走者の頑張りを示すこれこそが、わが高度経済成長の象徴なんです。これがペンキが剥げ、全体が魚の鱗のようになって、まだ街の一角に残っている。このいささかシュールな一時代の残骸が、日本独自の負のメンタリティを触媒に、前代未聞のミステリーという化学変化を起こします。
 本文のデザインも凝っていて、5つの章が入り乱れて展開するストーリーなのですが、章ごとに書体を変え、そのうち2つの章タイトルには、アイコンも入っています。
『屋上の道化たち』は、「絵画小説」かもしれない。活字はあくまで伝達の手段。看板とか、こういうヴィジュアルこそが主役であり、同時に謎を解くキーなんです。

プロフィール

島田荘司(しまだ・そうじ)
1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒業。
1981年、『占星術殺人事件』でミステリー界に衝撃的なデビューを果たして以来、名探偵・御手洗潔、刑事・吉敷竹史のシリーズを中心に数々の傑作、意欲作を発表。
2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。
御手洗潔シリーズは累計600万部に達し(海外翻訳分も含む)、明智小五郎や金田一耕助に並ぶ、日本の現代本格ミステリー小説ではもっとも有名な名探偵となっている。
また『ばらのまち福山ミステリー文学新人賞』の選考を務めるなど、新たな才能の発掘と育成にも尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳・紹介にも積極的に取り組んでいる。

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担当者コメント

 待ちに待った御手洗潔シリーズの最新作です!
 読み出すと、屋上からの連続墜死事件のとんでもない謎と、初期の快作『嘘でもいいから殺人事件』を想起させる島田荘司流ユーモアに刺激され、たちまち読了。無類に面白い傑作長編です! とりわけ解決シーンで明らかとなるずば抜けた奇想に、心底驚くことを保証します。
 そして、シリーズ前作『星籠の海』が玉木宏さん主演で、『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』として映画化され、6月4日(土)に公開されます。玉木宏さん演じる御手洗潔は美しく、怜悧で、カッコイイ!
 ミステリー映画としても大変ウェルメイドな仕上がりとなりました。映画が公開されましたら、ぜひ劇場まで足をお運びください。
 ますます広がる御手洗ワールドに加わる強力な最新長編『屋上の道化たち』をよろしくお願いいたします。

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御手洗シリーズ>遂に映画化! 「探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海」

2016年6月4日映画公開!

御手洗 潔・玉木 宏
小川みゆき・広瀬アリス 
石田ひかり 要 潤 谷村美月 小倉久寛 吉田栄作
原作:島田荘司『星籠の海』(講談社文庫刊) 
脚本:中西健二 長谷川康夫 音楽:岩代太郎 監督:和泉聖治
映画『探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海』公式サイト

©2016 映画「星籠の海」製作委員会

和製シャーロック・ホームズとも称される脳科学者の御手洗潔。彼が難事件を次々と解決する小説シリーズがいよいよ映画化される。〈御手洗潔シリーズ〉は、日本を代表する本格ミステリーの巨匠・島田荘司が1981年に発表したデビュー作『占星術殺人事件』から始まり、総部数550万部を更新し続けている大人気シリーズだ。その49作目の『星籠の海』(講談社文庫刊)は、上下巻からなる大冊。その面白さを損なうことなく、映画オリジナルのキャラクターも投入して大胆な脚本化を施した映画が『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』である。
「探偵ミタライの事件簿 星籠の海」に寄せて 島田荘司

 玉木宏さんは、御手洗を演じるのに最適任者ですね。ついにこういう俳優の登場、これに『相棒』シリーズのミステリーの名匠、和泉聖治監督の登場が重なって、私の故郷、広島県福山市を舞台とした『星籠の海』が、『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』として映画化されたのは、日本が高度経済成長期という威圧の時代を抜けて世代交代し、福山市も田舎を脱して成長を遂げ──、というような、さまざまな時代の巡り合わせなんでしょう。
 玉木さん扮する御手洗潔は素晴らしいです。低くてよく通る声に説得力がある。時に強引な推理で周囲を説得するには、あの声は必要です。彼は姿かたちが絵になり、立っているだけで画面が締まります。一般女性ファンにはこれは大事なこと。また全体構成から逆算して自分の演技を定めていく俯瞰の頭もあり、人柄もいい。これも大事。
 広瀬アリスさん演じる編集者、小川みゆきは、映画オリジナルのキャラクターですが、彼女の演技もとてもよかったです。もし第2弾が実現するなら、また彼女にも出てもらいたい。石岡君もむろん必要ですけれど。
 映画は文句のない出来です。無駄なシーンがまったくなく、物語総体、瀬戸内海の潮流同様、噛み合った複数の歯車の回転で、着実に前進していく。ミステリー映画としての完成度が極めて高い。要潤さん、谷村美月さん、吉田栄作さん、小倉久寛さん、石田ひかりさん、そうそうたる顔ぶれの主軸グループが、みんないい演技をしてくれています。
 原作の小説は2000枚近くあり、そのままの映像化は到底不可能です。映画のシナリオは150枚ですが、だからといってただダイジェストにしたら確実に面白くなくなる。そのため脚色には、一部私も加わって苦労しましたが、その甲斐はありましたね。
 特に気に入っているのはオープニングとエンディング。私が脳裏に見た光景が、見事に映像化されています。
 岩代太郎さん作曲の魅惑的な調べも、この映画の魅力を、背後で確実に、強力に後押しします。もともとは福山を全国区にアピールするために始動した、市制施行百周年記念のこの映画プロジェクトですが、それ以上の実りが感じられます。プロデューサーはじめとする映像化スタッフ諸兄、俳優のみなさん、企画実現を可能にしてくれた協賛各企業の方々に、この場を借りて深くお礼を申し上げます。

原作:島田荘司 『星籠の海』(上) (下)(講談社刊)
  (単行本・講談社ノベルス・講談社文庫)

『星籠(せいろ)の海(上) (下)』島田荘司

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