御手洗 潔・玉木 宏
小川みゆき・広瀬アリス
石田ひかり 要 潤 谷村美月 小倉久寛 吉田栄作
原作:島田荘司『星籠の海』(講談社文庫刊)
脚本:中西健二 長谷川康夫 音楽:岩代太郎 監督:和泉聖治
映画『探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海』公式サイト
©2016 映画「星籠の海」製作委員会
玉木宏さんは、御手洗を演じるのに最適任者ですね。ついにこういう俳優の登場、これに『相棒』シリーズのミステリーの名匠、和泉聖治監督の登場が重なって、私の故郷、広島県福山市を舞台とした『星籠の海』が、『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』として映画化されたのは、日本が高度経済成長期という威圧の時代を抜けて世代交代し、福山市も田舎を脱して成長を遂げ──、というような、さまざまな時代の巡り合わせなんでしょう。
玉木さん扮する御手洗潔は素晴らしいです。低くてよく通る声に説得力がある。時に強引な推理で周囲を説得するには、あの声は必要です。彼は姿かたちが絵になり、立っているだけで画面が締まります。一般女性ファンにはこれは大事なこと。また全体構成から逆算して自分の演技を定めていく俯瞰の頭もあり、人柄もいい。これも大事。
広瀬アリスさん演じる編集者、小川みゆきは、映画オリジナルのキャラクターですが、彼女の演技もとてもよかったです。もし第2弾が実現するなら、また彼女にも出てもらいたい。石岡君もむろん必要ですけれど。
映画は文句のない出来です。無駄なシーンがまったくなく、物語総体、瀬戸内海の潮流同様、噛み合った複数の歯車の回転で、着実に前進していく。ミステリー映画としての完成度が極めて高い。要潤さん、谷村美月さん、吉田栄作さん、小倉久寛さん、石田ひかりさん、そうそうたる顔ぶれの主軸グループが、みんないい演技をしてくれています。
原作の小説は2000枚近くあり、そのままの映像化は到底不可能です。映画のシナリオは150枚ですが、だからといってただダイジェストにしたら確実に面白くなくなる。そのため脚色には、一部私も加わって苦労しましたが、その甲斐はありましたね。
特に気に入っているのはオープニングとエンディング。私が脳裏に見た光景が、見事に映像化されています。
岩代太郎さん作曲の魅惑的な調べも、この映画の魅力を、背後で確実に、強力に後押しします。もともとは福山を全国区にアピールするために始動した、市制施行百周年記念のこの映画プロジェクトですが、それ以上の実りが感じられます。プロデューサーはじめとする映像化スタッフ諸兄、俳優のみなさん、企画実現を可能にしてくれた協賛各企業の方々に、この場を借りて深くお礼を申し上げます。
原作:島田荘司 『星籠の海』(上) (下)(講談社刊)
(単行本・講談社ノベルス・講談社文庫)