ふとした機会で目眩くいろはの世界に触れ、そこから我が国のミステリの始祖である黒岩涙香へと導かれ、その知られざる遊芸百般の巨魁ぶりに瞠目するうちに、この物語がジャックの庭の豆の木のようにムクムクと蔓をのばしていきました。何よりも、可能な限り濃厚な暗号ミステリを目指しています。どうか娯しんでいただけますよう。
竹本健治(たけもと・けんじ)
1954年兵庫県生まれ。大学在学中にデビュー作『匣の中の失楽』を伝説の探偵小説専門誌「幻影城」に連載し、1978年に幻影城より刊行。日本のミステリ界に衝撃を与えた。ミステリ、SF、ホラーと幅広く活躍し、ファンからの熱狂的支持を受けている。天才囲碁棋士・牧場智久を探偵役としたミステリは1980年~1981年のゲーム三部作(『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』)から現在まで書き続けられ、著者の代表的なシリーズとなっている。