こんにちは、麻見和史です。このたび『蝶の力学 警視庁捜査一課十一係』を刊行させていただくことになりました。殺害された夫。行方不明になった妻。死者に施された猟奇的な装飾の意味は何か? 事件の謎を解く鍵は、犯行動機の中に隠されているのでは──というストーリーです。
新米刑事・如月塔子と相棒の鷹野が殺人事件に挑むこのシリーズも、おかげさまで第七弾となりました。第一弾の『石の繭』以来、自分が面白いと思う題材だけを集めて一作一作書いてきたシリーズです。最初は頼りなく感じられた塔子も徐々に成長を見せ、先輩たちを驚かせるような場面も出てきました。塔子が観察・分析し、鷹野が最後に真相を推理するという役割分担もできています。
しかし本作では、あえてその枠組みを変えてみたいと考えました。常に隣にいてくれると思っていた鷹野が、ある日捜査の一線から外れてしまう。そのとき塔子はどうするのか? 今までずっとチームに守られていた彼女ですが、この事件ではみずから判断し、行動しなければなりません。これは塔子にとって非常に大きな試練で、乗り越えるには刑事としてさらに成長する必要があります。書きたかったのはその部分でした。
今回はチーム編成を変えることで、塔子をはじめ、登場人物たちのあらたな一面を描くことに挑戦しました。この猟奇的な殺人事件を、十一係はどのように捜査していくのでしょうか。シリーズのターニングポイントとも言える作品ですので、ぜひご一読ください。
麻見和史(あさみ・かずし)
1965年千葉県生まれ。立教大学文学部卒業。2006年に『ヴェサリウスの柩』で第16回鮎川哲也賞を受賞し、デビュー。大学での解剖学教室を舞台にした医療ミステリーで注目を集める。著書に『真夜中のタランテラ』(東京創元社)、『特捜 7 銃弾』(新潮社)、『屑の刃 重犯罪取材班・早乙女綾香』(幻冬舎)、『深紅の断片 警防課救命チーム』(講談社)がある。今後さらなる活躍が期待されるミステリー界の気鋭。
先日、シリーズ一作目『石の繭』が嬉しいことにドラマ化されて、熱が高まった私は原作を読み返しました。あらためて一作目を読むと、塔子は刑事としてまだまだ未熟で、がむしゃらで、ここ最近の彼女の姿を思うと、「いつの間にか頼もしくなったなぁ……」と感慨深かったです。それでもまだ、先輩刑事たちに頼る場面も多い塔子。今回の『蝶の力学 警視庁捜査一課十一係』では、これまで誰より頼りにしてきた相棒刑事・鷹野の戦線離脱という事態が彼女を襲います。原稿をはじめて読んだとき、私自身「事件は、二人は、一体どうなってしまうんだ!?」と、本作はシリーズ内でもっともハラハラしながら読みました。もちろん、この作品から読み始めても刑事・如月塔子の捜査と推理を楽しんでいただくこともできます! ぜひ、お読みください!