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講談社ノベルス

『神の時空 嚴島の烈風』高田崇史
『神の時空 嚴島の烈風』高田崇史

『神の時空 嚴島の烈風』
著者:高田崇史
価格:本体960円(税別)

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広島市内の大学に通う観音崎栞は実家のある宮島に戻っていた。台風のような烈風や地震など自然災害がつづくなか、神社で相次いで栞の知人が殺害される。「神の島」で起きている異変を知った辻曲彩音らは、怨霊を目覚めさせようと企む者たちの仕業だと感じ、宮島に急行する。突風吹き荒び、大鳥居が揺らぐ嚴島神社に封印された巨大な怨霊は解き放たれるのか? 怨霊鎮魂の高田ミステリ、クライマックスへ!

著者コメント

『神の時空』第5弾「嚴島の烈風」は、宮城の松島、京都の天橋立と並ぶ「日本三景」の一つであり、まるで海上に浮かぶように屹立する鮮やかな朱色の大鳥居で有名な「嚴島神社」が舞台です。
神社の主祭神は、海の女神である「宗像三女神」。
平清盛を始めとする平家の人々はこの神を篤く信仰したため、いつしか平家の守護神として崇敬されるようになり、やがて神社には数多くの神々が勧請され、江戸時代以降は大勢の参詣者で賑わったといいます。
しかし「嚴島神社」の本質は果たしてそれだけなのでしょうか?
何か重要なポイントを見落としてはいないだろうか……。
それが、今回の大きなテーマです。
神社には実際に何度も足を運び、最後は新横浜から新幹線で片道4時間の道のりを日帰りするという暴挙(?)にまで出ました。
しかしそのおかげで、一般のガイドブックには決して載っていないであろう(とても怪しげな)話を、たくさん書き記すことができたつもりです。
「嚴島神社」には、絵に描いたように見事な「結界」が張られています。しかも、誰もが目にしているのに何気なく見過ごしてしまっている「結界」です。
これから旅行や初詣で参拝される方は、ぜひとも実際にその目でご確認ください。私たち日本人は遥か遠い昔から怨霊たちと日々の生活を共にしていたのだなあ、と心から実感されることと思います。

次回作は、舞台を再び京都に移して、シリーズ第6弾『神の時空 伏見稲荷の遠雷(仮)』を予定しています。伏見稲荷に隠された謎を巡って、きっと大勢の狐たちが跳梁跋扈することでしょう(笑)
春立つ頃にお届けできればと鋭意執筆中ですので、こちらもよろしくお願いします。

Profile高田崇史(たかだ・たかふみ) 昭和33年東京都生まれ。明治薬科大学卒。『QED百人一首の呪』(講談社ノベルス)で、第9回メフィスト賞を受賞しデビュー。著作に「QED」シリーズ、「カンナ」シリーズ、「鬼神伝」シリーズ(2011年アニメ映画化)、「千葉千波の事件日記」シリーズなど。近作に『軍神の血脈 楠木正成秘伝』がある。

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担当者コメント

 ますます好調『神の時空』シリーズ第五弾の登場です。今回は、世界文化遺産・嚴島神社を有し、外国からも多くの観光客が訪れる「安芸の宮島」が舞台です。しかし、高田先生の筆は今回も容赦をしません! 果たして、世界遺産の嚴島神社は無事なのか。それとも、ユネスコも号泣の悲惨な結末になってしまうのか──。どうぞ、本書をお読み頂ければと思います。
 今回、私も宮島への取材旅行に同行させて頂きました。しかし、いつものことながら、先生は取材中、小説の内容に関することはあまり語られません。地元の方もあまり知らないような小さな神社なども丹念に足を延ばして取材されるのですが、「今回の話では、この神社が重要なポイントになるんだ」とか、そういうことを教えてはくれないのです。そのせいもあって、私といえば表参道で名物をたらふく食べたりして(下記の『食いしん坊コラム』を参照)、完全に観光客気分になってしまいました。
 しかし、原稿を頂いてびっくり。「先生はこんなことを考えながらあの景色を見ていたのか」と反省させられました。特に、最後に明かされる宮島の持つ悲しい記憶。これには胸を突かれる思いでした。
 さらに、この取材での暴飲暴食がたたったのか、本書の校了作業中、胆石で入院するはめに……。次に宮島に行く際は、本書を片手に、もう少し敬虔な気持ちで臨みたいと思います。

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神の時空 散歩in宮島

 今回の『神の時空 嚴島の烈風』の舞台となっている安芸の宮島は、年間三百万人近い観光客が訪れる有名な観光地です。中でも、世界文化遺産・嚴島神社は島を訪れた誰もが参拝すると言ってもいい名社です。しかし、本書で描かれる宮島は、そんな「観光地」のイメージとは少し違います。嚴島神社でも意識しなければ見逃してしまうような場所が重要な意味を持っていたり、観光客もあまり訪れない神社が物語の鍵を握っていたり……。ここでは、そんな宮島の「神の島」としての一端を〈神の時空〉流に紹介していきたいと思います。

神の時空 散歩in宮島

A 宮島に渡る前に、地御前神社へ!

「フェリーにのって宮島へ!」と逸る気持ちを抑え、島に渡る前に参拝してほしいのが地御前(じごぜん)神社。広電宮島線の「地御前駅」から歩いて約五分のところにあり、古くは嚴島神社の外宮と称された神社です。本書でも取り上げられる嚴島神社の祭典「管絃祭」でも、重要な役割を担っています。「神の島」とされ人の居住が許されなかった宮島を、対岸から遥拝するために建てられたのがこの神社の始まりと言われており、古人の宮島への敬虔な思いが偲ばれます。

「嚴島神社外宮」の扁額がかかる地御前神社の鳥居。 ▲「嚴島外宮社」の額がかかる地御前神社の鳥居。

B ひったくりバンビたちが歓迎!?

 宮島のフェリー乗り場を出ると、まず出迎えてくれるのが鹿さんたち。おとなしく可愛らしい鹿が大半ですが、中には観光客に無言で詰め寄り、虚ろな目で餌をねだる鹿もいます。しかし、こんな野生のプライドを失った鹿でも、野生動物ですので餌やりはやめましょう。さらに、観光客の背後に忍び寄って紙袋をひったくり、土産のもみじまんじゅうなどを包装紙ごとムシャムシャ食べてしまうという、餓鬼道に落ちた鹿もいます。 しかし、宮島の食堂の店員さんから「この島の鹿は紙やビニールを食べてしまうため、病気になって早く死んでしまう」という話も伺いました。鹿さんの健康のためにも、ひったくり鹿には気をつけましょう。

外国人観光客を襲う鹿。 ▲ 外国人観光客を襲う鹿。

C 要害山で戦国気分

「いよいよ嚴島神社に直行!」と行きたいところですが、もう少し寄り道。フェリー桟橋前の広場の先に、小高い場所があるので、まずはこの山を目指しましょう。標高わずか30メートルほどですが、この山は要害山といい、名高い「嚴島合戦」の大事なポイントとなる場所です。合戦の詳細は本書の説明に譲りますが、のちに中国地方の覇者となる戦国武将・毛利元就は、この要害山の上に宮尾城を築いて番兵を入れ、敵将・陶晴賢の軍勢をおびき寄せて、撃破したとされています。

 現在は海から少し離れたところにあるこの要害山ですが、当時は、この山の三方を囲むように海が入り込んでいて、まさに天然の要害と言うべき場所でした。山頂からみると、大軍を倒すために、平地の少ない宮島を合戦の場所に選んだ元就の狙いが実感できるのではないでしょうか。

D 嚴島神社は前と後ろに注目

 御笠浜の石鳥居を潜っていよいよ嚴島神社へ。嚴島神社の案内はガイドブックなどにもたくさん書かれていますので、ここではあえて『神の時空』流の注目ポイントを紹介しましょう。
まずは、火焼前(ひたさき)と呼ばれる場所。言うなれば嚴島神社の一番先っぽです(境内図①)。平舞台の先にある桟橋で、突端には灯籠が建っています。その先の海上に大鳥居があるため、絶好の撮影スポットとなっていますが、この場所にも秘められた意図が……!? その詳細は本書をお読み頂くとして、この火焼前から振り返って嚴島神社の構造や背後の山々との位置関係を把握しておくと、本書の楽しさが倍増するはずです。また、本殿の背後に見える茂みは、後園(うしろその)といわれ、いわゆる禁足地となっている場所。ここにも注目です。
 さらに、神社を出た後にも見逃せないポイントがあります! 神社を出たら、ちょうど本殿の真裏に回ってみてください。先ほど、火焼前から見えた禁足地・後園が玉垣に囲われ、中央には不明門(あけずのもん)と言われる本瓦葺の屋根を持つ門があります(境内図②)。嚴島神社に祀られる神様が通るための門とされ、決して開くことはない門です。ここまで書くと、『神の時空』ファンなら「うーむ、何かあるな」と思うはず。そう、この「不明門」にも隠されたもう一つの意味があるのです……。
 また嚴島神社の宝物館に展示されている「平家納経」は必見です。金銀で装飾されたその豪華絢爛な経典に、平家の栄華と財力が偲ばれます。さらに、ちょっと足を延ばして清盛神社や大元神社なども、ぜひご参拝ください。

火焼前で、大鳥居とともに写真におさまる高田先生。 ▲ 火焼前で、大鳥居とともに
写真におさまる高田先生。

E 「神の山」弥山山頂、御山神社、仁王門にも足をのばそう!

 せっかく宮島に来たのですから、「神の山」ともいわれる弥山の山頂を目指しましょう。ロープウェイの終点、獅子岩駅から山頂までは徒歩で三十分ほど。その間に、本書でも登場する弥山本堂や霊火堂、三鬼堂など見所がたくさんあります。脚力に自信がある方は、さらに足を延ばして、嚴島神社の奥の宮である御山神社仁王門、奥の院などを回るのがおすすめです。本書の登場人物、観音崎栞が駆け抜けたルートをたどることが出来ます。

静かな原生林に囲まれて建つ奥の院のお堂。 ▲ 静かな原生林に囲まれて
建つ奥の院のお堂。

まとめ

 このほか、今伊勢神社や長濱神社など、本書には宮島の神社がたくさん登場いたします。時間に余裕があれば、これらの神社もぜひ参拝してみてください!

食いしん坊コラム『宮島を食らう』

 別名「清盛通り」ともいわれる表参道は、土産物店や飲食店が軒を連ね、観光客であふれる楽しい場所。ここでは、そこで味わえる「宮島グルメ」を紹介したいと思います。
いわずと知れた名物の「もみじ饅頭」ですが、それに衣をつけて揚げた「揚げもみじ」は、食べ歩きにちょうどいい、ハイカロリーな新名物です。また、穴子もぜひ召し上がってほしい宮島の名物。カキフライと一緒に穴子めしを搔き込めば、食いしん坊のあなたも満足できるはず。それでも物足りないという方には「穴子まん」なる蒸し饅頭をご当地コーラの「広島コーラ」で流し込んでみてください。そして、仕上げのデザートには「鹿ソフトクリーム」はいかがでしょうか。と言っても「ソフトクリームに鹿肉が入っている」とかではなく、鹿フンに見立てた麦チョコをソフトクリームにちりばめた一品です!

広島コーラ ▲ 広島コーラ。
穴子めしとカキフライ ▲ 穴子めしとカキフライ。
おいしかったです。
鹿ソフト ▲ 鹿ソフト。
味は予想どおりでした。
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既刊リスト
『しあわせな死の桜』竹本健治 『禁じられたジュリエット』古野まほろ 『人間じゃない 綾辻行人未収録作品集』綾辻行人 『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』柚月裕子 『恐怖小説 キリカ』澤村伊智 『七月に流れる花』『八月は冷たい城』恩田陸 『QED ~flumen~月夜見』高田崇史  『雨色の仔羊 警視庁捜査一課十一係』麻見和史 『溝猫長屋 祠之怪(どぶねこながや ほこらのかい)』輪渡颯介 『悲衛伝』西尾維新 『悲亡伝』西尾維新 『悲録伝』西尾維新 『悲業伝』西尾維新 『悲報伝』西尾維新 『悲惨伝』西尾維新 『悲痛伝』西尾維新 『悲鳴伝』西尾維新 電子百鬼夜行シリーズ 京極夏彦 高田崇史ONLINE