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ペンギン屋敷の溺死体! 秘められた「殺意の証拠」をアニマル推理で解き明かせ!強面の窓際警部補・須藤友三と、動物オタクで天然系の巡査・薄圭子の警視庁「いきものがかり」の名(迷)コンビが大活躍!!さらに「ヤギ」「サル」「ヨウム」も出てきます。コミカル・アニマル・ミステリー傑作集!

『ペンギンを愛した容疑者 警視庁総務部動植物管理係』
著者:大倉崇裕
定価:1,550円(税別)
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警察小説ながらも、独特のユーモアに溢れた魅力的なこの「警視庁総務部動植物管理係」シリーズの着想のきっかけを教えてください。

大倉(以下 O):福家警部補シリーズの一本に、脇役の一人としてペットショップのオーナーが出てきたのですが、この人が殺人事件の捜査であるにもかかわらず、動物の心配ばかりしている。このオーナーの出番は数ページで終わりだったのですが、あるとき、ふと思いだしまして。「人より動物なのか!?」というキャラクターが動物絡みの事件の捜査をするという着想を得ました。

警察小説としてこだわりを持って書かれている点は?

O:警察組織のリアルにあまり制約されたくないというのが、本音なんです。ですから、何となくありそうな架空の課なり組織を作って、その中であれこれ物語を展開させていく形をよく取ります。「警視庁総務部動植物管理係」はその中でも一番、上手くいったパターンでしょうか。

動物オタクの薄巡査のキャラクターが印象的です。モデルはいるのでしょうか?

O:モデルはいなくて、ほぼ白紙の状態から書き始めました。決まっていたのは「人より動物」ということだけで。薄も須藤も、書きながらキャラクターができていきました。薄がトンチンカンな日本語を話すのも、書いている最中に、自然と出てきた感覚です。キャラクターが勝手に動きだすというのは、こういうことなのでしょうか。

須藤警部補と薄巡査の絶妙な掛け合いも作品の魅力のひとつですが、この二人の関係は将来的に変化がある予定はありますか?

O:「関係」というのはいろいろな意味を含みますが、かなり歳の差がありますからねぇ……。やはり純粋に、良き相棒としての関係が続いていくのではないでしょうか。でも、先のことは作者にも判りませんから。特にこの二人については。

シリーズの新作を書かれる時、どの動物にするかはどのように決められるのですか?

O:シリーズを始めた当初は、ペットとしてあまりメジャーではないものを取り上げることだけを決め、何となく頭に浮かんだものを順に作品化していきました。第一話が「十姉妹」なのは、自分で飼っていて飼育法などが判っているからです。パイロット版的な位置づけなので、良く知っている動物から始めようと思いました。その後の「ヘビ」「カメ」「フクロウ」は思いつくままです。次に「蜂」を選んだのは、長編を支える上で、危険度が高く、行動範囲も広い動物はいないかと考えているうちに閃きました。長編と短編の差別化という意味でも「蜂」を選んで正解だったなと自分では思っています。「ペンギン」は「フクロウ」を書いている時点で、友人たちからペンギンへのリクエスト、飼育情報などをもらいまして、次に短編を書くならペンギンと決めていました。「ヤギ」はかみさんと晩ご飯を食べているとき、「次の動物は何にしようかな」と何気なくつぶやいたら、「羊かヤギは?」という答えが返ってきて、「それだ!」と。「サル」はずっと候補に挙がっていたものでした。ただ、動物といっても頭がいいですし、ミステリーにもちょくちょく登場する生き物です。やっぱりハードルが高いんですね。それで後回しにしていたのですが、今回、「ペンギン」→「ヤギ」→「サル」という並びは何となくベストなのではないかという思いがあり、挑戦した次第です。ラストの「ヨウム」は、飼い主を亡くしたオウムやヨウムを引き取って育てている施設を取材したドキュメントを見て、感銘を受けたのが最初です。人よりも長く生きるペット。カメも長生きなのですが、オウム、ヨウムは喋る。亡くなった飼い主の声を鳥がずっと覚えていて、そっくりな声色で喋る。すごく感動的で、それを少しでも作品に盛りこむべく試行錯誤しながら書きました。

大倉さんご自身は、動物がお好きなのでしょうか? 特に好きなのは?

O:動物は好きですね。自分で飼ってはいないのですが、犬、猫はもちろん、鳥、カブトムシなどの昆虫も。

次の作品は何の動物にするか、すでにアイデアはあるのでしょうか?
あるとしたら、ヒントを是非お願いします!

O:実は「サル」の前に候補に挙がっていて資料まで集めた動物がいるのです。本としてのおさまりを考えた結果、「サル」になりましたが、その動物も忘れてはいません。次があれば、まずそこからいきます。ヒントは、「たまに方向オンチのヤツもいる」です。

作家を志したきっかけを教えてください。

O: 大学時代にミステリーにはまり、留年時代も含め五年間で数百冊読み、自分でも書いてみたいなぁと思い始めたのが最初です。

Q:初めて「小説」を書いたのはいつ頃ですか? またどんな作品でしょうか?

O:大学時代のどこかですねぇ。詳しいことは覚えていません。東京創元社が、「五十円玉二十枚の謎」というテーマで、小説の公募をしたことがあったのですが、それに向けて一作、書き上げました。結局、〆切に間に合わなくて送らなかったのですが、それがきちんと完結させた最初のミステリー小説だと思います。

影響を受けた作家、作品を教えてください。

O:横溝正史、アガサ・クリスティなどいわゆる「古典」と呼ばれている作品群には、大いに影響を受けています。作家を志してからは、東野圭吾さんの作品を貪るように読みました。「秘密」などが刊行され、大ブレイクされる直前のころだったのですが、こんなに面白いミステリーをこんなにたくさん書ける人がいるんだと、驚嘆した記憶があります。私が推理作家協会に入ったのは、東野さんが推理作家協会賞を取られたと聞き、授賞式にもぐりこみたい一心であったことをここに白状します。

執筆スタイルを教えてください。

O:深夜まで執筆し、夜明けと共に寝るという「夜型生活」にすごい憧れがあり、専業作家となってすぐ、夜型にシフトしてみました。しかし、体質的に向いていないのか、すぐ病気になりました……。今は一日五枚程度のノルマを決め、何がおきようと、必ず毎日、それをクリアすることを目標にしています。調子がよく三十分で五枚書けたら、後は遊んで早く寝る。調子が出ず、八時間かかっても五枚書けなければ、寝ずにがんばる──という感じでやっています。

執筆中かかせないアイテムなどはありますか?

O:コーヒー。これにつきます。

執筆をしていない時は、もっぱら何をしていますか?

O:プラモデルを作ってます。仕事机とプラモ用作業机がL字型になっていて、正面を向いて仕事をし、疲れたら、椅子を九十度回転させ、プラモデルを作り、また回転させ仕事に戻る……ような環境が夢です。

三度のメシよりも好きなものは何でしょう?

O:怪獣です。何より好きです。命です。人生です。

大倉さんといえば、「刑事コロンボ」にお詳しいことで有名です。大倉さんの「刑事コロンボ:ベスト3エピソード」を教えてください。

O:一位「仮面の男」
  二位「殺しの序曲」
  三位「だまされたコロンボ」

最近、あちこちで書いたり喋ったりしているので、理由については割愛します。興味のある方はぜひ、見て下さい。

最近のお勧め海外ドラマ、映画は何かありますか?

O:海外ドラマですと、「TRUE DETECTIVE/二人の刑事」は素晴らしかったです。それと、「HANNIBAL/ハンニバル」! 映画は最近、なかなか観に行けません。

読者の方々に一言お願いします!

爆笑、驚愕といったものではなく、全編を通じてクスクスと笑え、ラストにちょっとだけハッとびっくりできるような、そんなミステリーが書きたいなと最近は考えています。「ペンギンを愛した容疑者」もそんな自分なりの理想に近づけるべく、書きました。楽しんでいただければ、うれしいです。

PROFILE

大倉崇裕(おおくら・たかひろ)
1968年生まれ。京都府出身。学習院大学法学部卒業。1997年「三人目の幽霊」で第4回創元推理短編賞佳作を受賞。1998年「ツール&ストール」で第20回小説推理新人賞を受賞。落語を愛好し、登山を趣味とし、特撮や怪獣、海外ドラマに造詣が深い。精力的な執筆を続け、『福家警部補の挨拶』は2009年、2014年にTVドラマ化されるなど人気を博す。著書に『七度狐』『白戸修の事件簿』『オチケン!』『聖域』『夏雷』『問題物件』『BLOOD ARM』『小鳥を愛した容疑者』『蜂に魅かれた容疑者』などがある。

名コンビの意外でトボけた会話に笑い、動物の意外な実相を知って驚き、ミステリーとしての意外性に唸る、という読んでお得な短編集です。
なにより須藤と薄のキャラクターが魅力的!
頑固で不器用な熱血中年刑事の須藤が、常識外れの言動を繰り広げる薄に手を焼きながらも、次第に2人の間に信頼関係が築かれていく様はシリーズものの醍醐味です。
軽快な文章で明るく楽しく読めるミステリーです。

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