だれと友達になりたいとか、だれはいやだとか。ちょっと気持ち悪い。「友達は選ぶものじゃないです!」私は叫ぶ。だけど、そんな私もうまく考えることができないでいる。友達って、友情って、……なに?
だけど、私はあの子のことがとっても大事だから、私が答えを導きださなければいけない。私がふるおうとしているものが、正義なんかじゃなくて身勝手な暴力だとしても、その可能性を、その責任を、その汚さを、背負うことが力をふるうってことだと思うよ。それでもいいからふるいたい暴力を私はふるう。私は凡人だから、自分と大切なあの子のために力を使うんだ。
どこにでもありそうで、どこにもない、たったひとつの女の子たちの物語。
担当者コメント
今回の物語をイメージした詩を、最果さんにお書きいただきました。
きみがぼくに使うかわいいという言葉が、ぼくを軽蔑していない、その証拠はどこにあるんだろう。好きとも嫌いとも言えないなら、死ねって言っているようなものだと、いつだってきみは、怒っている。ぼくは、きみを好きでも嫌いでもないまま、優しくありたい。かすかな、死の気配でありたい。
愛情で語れる友情は、ただの代替品でしかない。
きみが孤独なふりをするあいだ、ぼくはきみと友達でいる。光る波がおしよせて、ひいていく。きみの足首がぼくと同じで、ただそこにあることを、だれにも証明ができない。
孤独になれば、特別になれると、思い込むぼくらは平凡だ。制服がかろうじてぼくらを意味のあるものにしてくれる。
きみは、どんな大人になるかな。
あたりさわりのない、この世にいてもいなくても変わりない、誰かになるのかな。
幻滅が存在しないのは、友情だけだよ。海が告げる。きみは立っている。
ぼくの友達。
(詩・最果タヒ)
友情ってなんだろう。青春ってなんだろう。言葉で定義しようとすればするほど逃げていくそれらを、ひとつの箱に閉じ込めたら、こんな物語ができあがりました。