『純喫茶「一服堂」の四季』
著者:東川篤哉
定価:本体1450円(税別)
鎌倉の路地裏でひっそり営業する古民家風の純喫茶「一服堂」。
エプロンドレスがよく似合う美人店主は、超のつく人見知り。
ただし、持ち込まれた難事件を推理するときには、態度も口調も豹変する! 事件の現場には一歩も踏み込まず、いや店の敷地から一歩も出ずに推理するのは、猟奇事件ばかり!
四季の怪事件をユーモアたっぷりに描く極上の傑作推理短編集!
安楽椅子(あんらく・よりこ)
鎌倉の路地裏にある純喫茶「一服堂」の店主。色白、黒髪の美人で超人見知り。
しかし持ち込まれた事件を推理しはじめると豹変する。
村崎蓮司(むらさき・れんじ)
神保町に社屋を構える『放談社』週刊未来編集部、記者。軽率でいい加減だが憎めない性格。
「春の十字架」事件では、殺人事件の関係者となる。
夕月茜(ゆうづき・あかね)
神奈川県警横須賀署・刑事課勤務の美人刑事。
「一服堂」の常連的存在で椅子(よりこ)の推理には一目置いている。
天童美幸(てんどう・みゆき)
郊外のガソリンスタンド勤務。エリート男性との結婚を夢見る元気溢れるミステリファン。
「もっとも猟奇的な夏」事件の関係者。
南田五郎(みなみだ・ごろう)
作家(売れていない)。ヒットメーカー東山敦哉(ひがしやま・あつや)の呑み友達。
ちゃっかりしていて、小物感満載。これまた憎めない性格。
出身地
広島県尾道市。ただし赤ん坊のときに暮らしただけなので、いっさい記憶はありません。
幼少期の読書体験
特に本を読む子ではなかったと思います。絵本くらいは読んでいたんでしょうか。
ミステリを読み出した時期
たぶん小学三年生か四年生のとき、友達に勧められて。
最初に読んだ作品
子ども向けにリライトされたエラリー・クイーンの『靴に棲む老婆』。
「ミステリー」派か「ミステリ」派か
一応「ミステリ」派です。唯一、『放課後はミステリーとともに』のタイトルにのみ、「ミステリー」を用いていますが。
作家になろうと決意した時期とそのきっかけ
二十六歳のとき。会社を辞めて暇になったときに、偶然手にした有栖川有栖氏の『月光ゲーム』が、創作のきっかけとなりました。
最初からミステリ作家を目指していたのか
ジャンルでいうとミステリにしか興味がなかったので、必然的にミステリ作家を目指すよりなかった、という感じです。
ユーモアミステリを選んだ理由
自分にとって書きやすいスタイルだから。あと、僕がデビューした頃は、ユーモアミステリは冬の時代で書き手も少なく、その分、自分の入り込む余地があると思いました。
影響を受けた作家とその作品
赤川次郎『三毛猫ホームズの推理』、島田荘司『斜め屋敷の犯罪』、横溝正史『本陣殺人事件』、天藤真『遠きに目ありて』、エラリー・クイーン『エジプト十字架の秘密』など。
無人島に持っていく三冊の本
二階堂黎人『人狼城の恐怖』(あ、これ一作で全四冊か……)。アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』。ヒッチコック&トリュフォー『映画術』。
映画ベスト3
ロベール・アンリコ監督『冒険者たち』。ブレイク・エドワーズ監督『ピンクの豹』。深作欣二監督『仁義なき戦い』。
執筆スタイル
朝、九時ぐらいからパソコンに向かって書き始めて、それが昼ぐらいまで。その後、ファミレスなどで創作ノートを広げて、続きの下書きを書いたりします。そのノートを見ながら、また夕方や夜にパソコンに向かったり、向かわなかったり……といった感じです。
トリックは、どこで、どのように思いつくか
決まったやり方はありませんが、新聞やテレビを見ているとき、あるいは街を歩いているときにでも、なにか使えそうなネタが思い浮かんだときには、ノートにメモしておきます。そのノートを眺めながら、使えそうなネタを選んで具体的なトリックに仕上げていく感じです。
作家になってよかったこと
職業欄に「作家」と書けること。以前は「無職」とか「アルバイト」でしたから。
「一服堂」を鎌倉にしたのは、なぜ
レトロなイメージの街といって真っ先に思い浮かんだのが鎌倉だったから。でも正直、川越あたりでもよかったなあ、と書き終えたころに思いました。
モデルになった喫茶店はあるか
ありません。適当に書きました。
よく注文する飲み物
アメリカン珈琲。なぜアメリカンなのか、どこがアメリカンなのか、正直よく判りませんが、大抵それを注文しています。
理想の喫茶店
椅子とテーブルが大きくて、適度に空いている店。良心的な価格設定と、こだわりのない味。そういう平凡な店がいいと思います。
ヨリ子さんのモデル
いません。こんな人いないでしょう。人見知りと書いていますけど、実際こんな人がいたら、それはもう人見知りどころじゃなくて、人格が破綻した人ですよね。
キャラクター作りで心がけていること
基本ユーモアミステリなので、主人公にはなにかしら笑いに繋がるような人物像が求められます。逆にいうと、おとなしくて優しくて賢くて立派な優等生的人物は書きにくい。結果的に、なんらかの愉快な欠点を抱えたキャラクターを多く書いている気がします。
キャラクターの誕生秘話
三話目に東山敦哉と南田五郎という二人のミステリ作家が登場します。読めば判るとおり、この二人のモデルは僕自身です。南田五郎が売れなかったころの僕で、東山敦哉がヒット作を出した後の僕みたいな感じで書いています(かなり誇張されていますが)。なぜ、自分自身をモデルにしたかというと、架空の作家というのは、実は書きにくいからです。例えば「売れない作家、黒山研三」なんてうっかり書くと、読者は勝手に「あ、東川が黒田研二のことを売れない作家と馬鹿にした。黒田研二はゲーム小説『青鬼』シリーズが大ヒットしてて、実際は超ウハウハなのに!」とか思ったりするでしょ。そうなると架空の名前ひとつ考えるのも結構面倒くさい。だから自分自身をモデルにしたというわけです。
安楽椅子探偵のアイディアはどこから
まず、名前ありきです。名前から考えて、そのあとで美人バリスタとか、人見知りとか、モノを壊すとかいう設定を考えました。
続編の予定
ぜひ書きたいものです。書けるかどうか判りませんが。
読者へのメッセージ
カバーに描かれた美人バリスタの姿にビビビッときた人は、ぜひジャケ買いしてください。中身もけっして期待を裏切らないものになっていますから。
1968年広島県尾道市生まれ。岡山大学法学部卒。
2002年、カッパ・ノベルスの新人発掘プロジェクト「KAPPA-ONE登龍門」第一弾として選ばれた『密室の鍵貸します』(光文社文庫)で、本格デビュー。2011年『謎解きはディナーのあとで』(小学館文庫)で第8回本屋大賞を受賞。映像化作品も大ヒットとなる。
他著作に『館島』(創元推理文庫)『もう誘拐なんてしない』(文春文庫)『放課後はミステリーとともに』(実業之日本社)『魔法使いと刑事たちの夏』(文藝春秋)など多数。
登場人物全員のキャラが濃いですね(笑)
テンポの良い会話のおかげで最後まで一気に読めて、とっても面白かったです!(10代・女性)
絶対に春夏秋冬の順番に読みましょう。マニアもミステリ初心者も
老若男女ひっくるめて東川ミステリの虜になりましょう。(30代・男性)
中高生の方にもおすすめの傑作ミステリです!!(10代・男性)
強烈な個性のキャラクターが登場する新たな東川ワールドを堪能できて大満足。
(30代・男性)
そんなバカな、とめいっぱい突っ込みつつ、ほんわか気持ちの良い物語でした。
(20代・女性)
一見ハチャメチャに思える推理が、
ワクワク感やハラハラ感を与えてくれ、たまりません。(20代・男性)
微妙な味なのに潰れない、奇跡の「一服堂」。
ヨリ子さんに拒絶されても行ってみたい。(30代・女性)
美味しい珈琲のように後味の良いミステリーでした。(10代・女性)
もう一度読み返して、さらに面白さが倍増。1度目よりも2度目の方が面白いなんて、
二日目のカレーみたいな美味しさ!な本でした。(40代・女性)
「一服堂」の珈琲はイマイチですが(笑)これは何度読んでも味が出る、
丁寧に豆を挽きネルドリップで抽出した極上の珈琲のような作品。(10代・女性)