本作は「ラノベ史上最高の作品」であります。これだけでは不親切なので、もう少し丁寧に書きます。
これをラノベと呼んでいいならですが、本作は「ラノベ史上最高年齢の作者が書いた作品」であります。
中二病で発熱中の読者のみなさんと、同年代であったころのぼくは、まるごと戦闘機の工場にされた学園で、ドリルや旋盤の油に塗れていました。1944年当時の日本の話です。学園生活らしいものを経験できなかったぼくには、今のみなさんの学園を描く力も感覚もありません。でも現実に体験不能だっただけに、せめて小説として書きたかった!
そんなわけで、22世紀の高校生が18世紀を舞台に26世紀のテロリストと戦うという、SFとミステリの騒々しいキメラができました。どうか、手に汗握るほど呆れながら、読んでやってください。
ミステリ作家として多くの作品を生み出し、アニメ脚本家として数多の作品に携わってこられた辻真先先生。今も「名探偵コナン」の脚本に参加し、幅広く小説やアニメをチェックされている、スーパーマンのような方なのです。いったいいつ休んでいるのか、そもそも休んでいないのでは……と、そのお仕事量には驚かされるばかりです。
そんな辻先生が「自分にしか書けない青春ミステリを」と生み出してくださった本作。青春ミステリにSF的な仕掛けが加わった、読み応えのあるどエンタメになりました。「未来の人間だからといって、必ずしもすべてが江戸時代に勝っているわけではない。江戸時代には江戸時代の強みがある」という“時代”に対する真摯な眼差しが、この作品をさらに重みのあるものにしてくれていると、私自身、読んでとても感激しました。
カバーは、漫画家の水谷フーカさんに描いていただきました。江戸時代の格好をしたキリリとした五人の高校生が目印です。ぜひお読みください!