『りぽぐら!』刊行の経緯を教えてください。
西尾維新の母体とも言うべき文芸雑誌『メフィスト』で、一年に亘り連載された小説をまとめた本が『りぽぐら!』で、タイトル通りに『リポグラム』に正面から取り組んだ短編集です。『リポグラム』とは、簡単に言うと、使用する文字に制限をかけて小説を書く執筆方法です。アナグラムやパングラムと並ぶ、いわば言葉遊びの一種なのですが、今回は『ひとつの短編小説を、四通りの制限で書く』というチャレンジをさせていただきました。LV.1、LV.2、LV.3と、三段階のリポグラム。つまり『りぽぐら!』には三篇五通り計十五編の短編小説が収録されております――
何かと奇を衒いがちな西尾維新のこれまでの著作と比べても、なお珍しい感じの本です。
LV.1に挑戦した当時の感想を教えてください。
そもそも本企画をメフィスト編集部に持ち込んだのは僕自身なのですが、特にヴィジョンが見えていたわけでもないので、始まりは何もかも手探りでした。くじ引きを手作りするのは楽しかったですけれど、くじを引く段階(フリーワードを選ぶ段階)でまだ『どの字がどう必要か』がわかっていないので、難易度とかはやってみないとわかりませんでした。苦労話は控えますが、終えてみると、日本語における『ぬ』の使用頻度が低過ぎると思いました。
LV.2、LV.3と、難易度を上げてみていかがでしたか?
正直に言うとLV.3よりLV.2のほうが苦戦しました。難易度はもちろんLV.3のほうが上がっていて、それは小説に反映されているのですが、くじ運に恵まれなかったLV.2は本当にやばかったです。『何の字が使えないか』よりも『何の字が使えるか』のほうが大事みたい。本当ならLV.2とLV.3の間にもう一段階置くべきなのですけれど、我慢しきれず一足飛ばししちゃいました。LV.4ってどんな感じでしょうね。
計十五人の方々に、一枚ずつ挿絵を寄せていただきました。完成イラストをすべてご覧になった感想を教えてください。
単行本化にあたり十五人の絵師さんに豪華挿絵を描いていただきました……というか、豪華過ぎますね。文字四十六音全部封鎖しちゃっていいんじゃないかと思わされました。『りぽぐら!』だからこそ実現した特別感溢れる企画なのでしょうが、本当に実現する本が『りぽぐら!』でよかったのかという疑念も残らざるを得ません……でもまあイラストって究極のリポグラムですし?
読者の皆さまにメッセージをお願いします。
同月発売の物語シリーズが『百パーセント趣味で書かれた小説』だとすれば、この『りぽぐら!』は、『いい仕事ができた!』という手応えのある一冊です。書き下ろしのあとがきでもリポグラムをやっていたりするので、ぜひお目通しください。よろしくお願いします。
プロフィール
西尾維新(にしお・いしん) 2002年、『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』(講談社ノベルス)にて第23回メフィスト賞を受賞し、デビュー。デビュー作に始まる〈戯言〉シリーズは西尾維新を代表するシリーズとなる。その後も精力的に執筆を続け、〈人間〉シリーズ、〈世界〉シリーズ、12ヵ月連続刊行の『刀語』(講談社BOX)など、その作品の幅は広い。また、2009年夏には『化物語』がアニメ化され、爆発的な人気となり、名実ともにゼロ年代を代表する作家となる。その執筆意欲はとどまるところを知らない。