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『図書館の魔女』上・下 高田大介|講談社ノベルス

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『眼球堂の殺人〜The Book〜』周木 律 『愛の徴(しるし)天国の方角』近本洋一 『図書館の魔女』高田大介
第45回メフィスト賞受賞作 剣でも、魔法でもない、少女は“言葉”で世界を拓く。本を愛し、言葉の力を信じるすべての人に!ファンタジー界を革新する大作、ついに登場!『図書館の魔女』上・下 高田大介

著者コメント

たいへん長らくお待たせしておりました、拙著をようやくお手元にお届けすることが出来ます。ずっとお待ち頂いていた読者の方々に、お詫びと感謝とをお伝えしたく思います。
歴史の中に数々の大図書館が失われてきました。アレキサンドリアの大図書館、アッシュールバニパルの古代図書館、ペルガモンの大図書館、バグダードの智慧の館、コンスタンチノープルの書叢……。そうした幾多の「現存しない大図書館」への追憶と愛惜をこめて、この物語は図書館を主たる舞台装置とし、書誌学や文献学、古代言語学に対する著者の尊敬の丈を投影しました。然るべく本格的な「図書館を舞台とする小説」として構想しました。
どんな書物にも繙けば立ちあがる固有の世界が在ります。したがって書物の表紙は文字通り一つの世界につづく扉でもあるわけです。それならば図書館にはどれほど多くの扉が用意されているということになるのでしょうか。『夏への扉』のペトロニウスはこちらの扉を試してみればよかったのかも知れません。なぜって、図書館に犇めく扉の内の幾つかは本当に夏に続いているはずだからです。
拙著の扉はとある地方の晩秋に続いています。そこから主人公たちの長く険しい旅が始まるわけですが、苦しい旅というものがきっとそうであるように、この旅にも得難い果実を収穫する機会があるはずです。
ぜひともこの書物の扉の前に立ってみて下さい。作者はそこで燧(ひうち)でも打ちましょう。それっきり私は姿を現しません。あとに残されるのは読者の皆様とそして物語のみ。ひとたび扉を潜れば、余所ではちょっとお目にかからない世界と出来事が繰り拡げられることをお約束します。それでは近く扉の前で。


プロフィール
高田大介(たかだ だいすけ) 1968年、東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。早大、東京芸大などで講師を務めたのち渡仏、現在はリモージュ大EDSHS EHICに籍を置き博士論文執筆中。専門分野は印欧語比較文法・対照言語学。本書で第45回メフィスト賞を受賞。

担当者コメント

ミステリー小説にトリックが欠かせないように、ファンタジー小説には「魔法」や「剣」がなくてはならない――そう思ってきました。しかし、この『図書館の魔女』で主人公のマツリカが使うのは「言葉」のみ、です。どんな物語なのだろう、と読み進めていくと……心を打つのです! ページを捲る、そのゆるやかに流れていく時間の中で、自分の中に「何か」が芽生えたことが確信できました。上下巻あわせて1400ページを超える本作は、あなたの心も打つはずです。「魔法」でも「呪(しゅ)」でもなく「言葉」で世界と戦う、誰も知らなかった物語。メフィスト賞受賞作連続刊行の掉尾を飾る超大作が、いよいよ登場します!

著者一問一答

メフィスト賞に応募したきっかけは?

書き上がった小説がちょっと普通じゃないものになってしまったので、「普通じゃない小説大賞」みたいな賞でもないものかと探したところ、メフィスト賞が目に留まった。しかも枚数の上限が無いというのが決定打になって応募した。京極夏彦氏ゆかりの賞だったということも大きく、ここなら規格外に分厚い本でもことによったら出してもらえるのではと一縷の望みを託した。

受賞を知った時、最初に思ったこと。その後、まずしたことは?

連絡を下さった編集部 S 氏のメール文面にアンビギュアスな部分があり「これは本当に受賞したということだろうか?」と訝しんだ。なにかかつがれているのではあるまいな?
「連絡来た」と家人に伝え、半信半疑のまま酒盛りをした、のではなかっただろうか。本決まりと知らされるまでの1、2週間は大いに煩悶のあまり食事も通常の5割増しいただいてしまった。

受賞の知らせを聞いたのはどこ?

問題のメールを見たのはアパートメントの階段であった。なんで階段なんかでメールを受信したのかというと、階段に座ってラップトップを膝に拡げて何か書いていたから(階段で物を書くこともある)。

作家を志したきっかけは?

何故かは判らないがいずれ作家にならねばなるまいと青年期から期するところがあった。いままで書かないでいたのは、ずっと他に書くものがあったから。

初めて「小説」を書いたのはいつ頃? またどんな作品?

『図書館の魔女』が第1作だが、小学校の作文の時間に幻の処女作として「屋根裏で埃をかぶっている鏡の割れたところに異世界への扉を見つけた」といったお話を書いたことがある。念頭にあったのは『ライオンと魔女と衣装箪笥』ではなく『やぶれだいこ鬼だいこ』(角田光男)ではなかったかと思う。

自分で自分にキャッチフレーズをつけるとしたら?

キャッチフレーズを自称するなど、ひ弱な自意識が軋みをあげてしまう。

講談社ノベルスで好きな作品をあげるなら?

「戯言」シリーズ

影響を受けた作家、作品は?

高校生のころに惑溺していたのはカート・ヴォネガット Jr. とトーベ・ヤンソン、これで思想形成した。こうした小説を書きたいと常々仰ぎ見ているのはディケンズ、大デュマ、ドストエフスキー。ずいぶん「文学的」なところから挙げてきたなと思われるかも知れないが、とくに主要な長編はいずれも娯楽小説として一級だと考えている。同時代のものならキング、アーヴィング、ジョゼフ・ヘラー。ファンタジーならばトールキン、ルイスらよりも断然ル・グウィン。エンデなら『はてしない物語』もいいが、むしろ偏愛するのはジム・ボタン・シリーズ。ストーリー構成の上で模範としているのはフォーサイス、あるいはヒッチコック。キャラクターを如何に立ち上げ肉づけるかはキングとアーヴィングを範とする。日本語の文体で影響が大きかった作家は田中小実昌、東海林さだお、赤瀬川原平。また、寺田寅彦、九鬼周造、林達夫、樫山欽四郎といった学者の随筆の文の呼吸を意識して真似している。

執筆スタイルは?

ある程度の長さの塊を頭の中で推敲しつづけ、まとまったらいちどきに書く。3、4頁もどって読み返しては、行ったり来たり続きを足していく。水前寺清子式。

執筆中かかせないアイテムは?

Nisus Writer Pro とお茶。

執筆中あったエピソードで忘れられないものは?

当時のメインマシン iBookが不調でスクリーンを90度まで開くと画面が消えてしまう。そこで細めに開いた画面を覗き込みながらだましだましタイプしていたら首をいためた。

受賞作の着想のきっかけは?

とあるファンタジーを子供に読み聞かせていたところ食いつきが悪かったので「知っている中で一番面白い話をしてやろう」と即興ででっち上げたのが「図書館の魔女と少年の出会い」の場面だった。これに世界観とディテールを足して文字にし始めたら、最初の構想とまったく異なった展開になった。

執筆期間はどれくらい?

投稿時にすでに足掛け3年かかっていた。

応募時の「キャッチコピー」

策謀の都に図書館を守る口のきけぬ魔女。たったひとつの武器は手話。

読者の方々に一言!

長らくお待たせいたしましたことについて、伏してお詫び申し上げます。それでも万難を排し、ようやく拙著を御手元に届けられる運びになりました。かつてウェブサイトを開店休業にした時の挨拶を再掲させて下さい。 通常ならば4巻本にも相当する分量の一挙刊行です。その物量ばかりでなく内容においても『図書館の魔女』は、いささか尋常を欠く物語となりました。万人の好評を得られるか、はなはだ不安です。ですが決して少なくない読者に「これは自分だけのために書かれたお話だ、私のための物語だ」と、そう思ってもらえるような小説になったと自負しています。この「書物をめぐる物語」が、実際に書物となるという巡り合わせに、誰よりも作者が身の引き締まる思いでいます。

担当者一問一答

『図書館の魔女』を一言でいうと?

「超弩級の革新的ファンタジー小説」です、間違いなく。

ズバリ、この本の魅力は?(この作品のスゴイところは?)

(1)主人公の2人、マツリカとキリヒトの「言葉」を介したふれあいの美しさ! (2)「言語学的トリック」という、著者の高田さん以外には真似のできない謎解きを完成させていること。(3)物語の緩急の、「急」が始まる瞬間のスリリングさ……個人的には、この3点でノックアウトされました。

著者:高田大介さんを一言でいうと?

インテレクト(理知)とユーモアのバランスが絶妙な方です。

受賞に至る経緯を簡単に教えてください。

メフィスト賞応募時の3000枚を超える分量には文三の誰もがたじろいだのですが……(笑)。読み切った編集者が内容を絶賛し、受賞となりました。

どんな人に読んでほしいですか?

「本」や「言葉」が大好きな方ならどなたでも! 物語全体からも、場面ごとのエピソードからも、驚きと感動があふれ出しています。そして、ファンタジー好きな方はもちろんですが、ミステリーファンにも強くお薦めしたいですね。

カバーデザインについて、一言。

装丁家、ミルキィ・イソベさんにデザインしていただきました。ビジュアルの美しさはもちろんですが、質感にも驚きます。どうぞ手に取って、触れてみてください。

今後の刊行スケジュールを教えてください。

現在、受賞作の続編に取り組まれています。また、民俗学的なモチーフを用いた作品も構想されていますので、これからの活躍にもどうぞご期待ください。

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