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『君のために今は回る』白河三兎|講談社ノベルス

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『君のために今は回る』白河三兎

好きなってごめん。好きなってくれてありがとう。

ねぇ、銀杏。わたしたちは確かに友達だったよね?
わたしが観覧車の幽霊になって随分時間が経ちました。
この観覧車には変わった人がいっぱい乗ってきます。盗聴魔、超能力を持つ占い師、自信喪失した女記者、ゴンドラでお見合いをする美人医師……みんな必死にくるくる生きてる。
だから今、わたしは人を思う力を信じてる。そうしたらいつかもう一度、あなたに逢えるかな?
これはすれ違う人々の人生と運命を乗せて、回り続ける観覧車の物語――。

著者コメント

初めてメフィスト賞に応募した作品も、観覧車が出てくるものでした。
あれから5年ほどたち、再び、観覧車を舞台にした物語を書きました。
今回は人と人とのつながりを描いた小説です。
横浜の港町にある観覧車がつなぐ、迷いながらも必死に、くるくる生きている人々のお話、気に入っていただけると嬉しいです。

担当者コメント

『プールの底に眠る』でメフィスト賞を受賞してデビューし、『私を知らないで』で多くの読者を涙させた白河三兎さんの最新作が、単行本で登場です!
白河さんが紡ぐ優しくも切ない物語を読むたびに、いつも胸の中に温かなものが広がります。

スペシャルエッセイ

この物語は観覧車を舞台にした人々の擦れ違いを描いているが、元ネタは私が小学三年生に上がったばかりの時に書いた作文だ。市内に遊園地がオープンし、学校で遠足へ行った時の思い出が作文のテーマだった。

『ピカピカの遊園地』
私たちが遠足で行った遊園地は、新しくて素敵な楽しい場所です。私が一番好きだと思ったのは、観覧車です。観覧車には、赤や青や緑のゴンドラがあって、綺麗でした。
みんなで乗りました。眺めがいいし、他の組が歩いているのを見ました。お花畑もあります。ピカピカの遊園地が全部見える。
みんなピカピカです。ジェットコースターも。ティーカップも。教頭先生も。三年一組の先生も。新しい友達も。みんなピカピカの遊園地が大好きです。

帰省した際に、偶然その作文を発見して読んだのだが、書いたことを全く覚えていなかった。記憶力の弱い私は「遊園地なんか行ったかな?」となんの感慨にも浸れなかった。
ただ、その頃に、作文のことで親に怒られたことはなんとなく記憶に残っていた。母に訊いてみると、「ああ。その作文のせいで私は恥をかいたんだから」と説明した。母の話によると、小三の私は二人の先生の寂しい頭と、新しい遊園地を「ピカピカ」とかけて小馬鹿にしたらしい。完全な濡れ衣だ。
私は二年生まで歩いて三十分以上かかる小学校へ通っていた。その学校は一学年十クラスもあるマンモス校だったために、近くに小学校が新設されることになった。それで私は三年生から新設校へ通うことになった。
新しくできた小学校だから、校舎も先生も生徒もピカピカだった。私は作文でそのことを書いただけだ……と思う。記憶がないから断言はできないけれど、たぶんそうなのだ。私だって子供の頃はピカピカの心を持っていたはず。

白河三兎

書店員さんコメント

くまざわ書店 南千住店
阿久津武信さん

「切なさの魔術師」の異名は今作でも健在! 白河節炸裂!

Fantastic!
Eternal!
Noble!
Dramatic!
Integrity!
すべてが詰まった1冊ですね!

紀伊國屋書店 横浜みなとみらい店
安田有希さん

くるくる生きてる。
回って、戻って、それでも後悔しないように。
「あのときこうしていたら。」
そんなささいな積み重ねが、自分や友達や、
知らない誰かの明日を回している。
そんないい加減で愛すべき世界で、わたしたちは生きている。

久しぶりに観覧車に乗りに行こう。
すぐそこにある観覧車が、とてもかわいく見えました。

芳林堂書店 高田馬場店
飯田和之さん

常に回り続ける観覧車のように、人間の気持ちも回り回って止まることを知らない。 しかし偶然にも止まったとき、奇跡は起きるのでしょう。

紀伊國屋書店 横浜店
川俣めぐみさん

くるくると止まることなく回る観覧車。
その観覧車に乗りにくるちょっと変わった人たち。
伝えたい想いを抱えたままくるくる回る。
伝えたい想いはきちんと伝えないと後悔する。
でも、伝わるまでくるくると回るのも悪くない。ちょっとせつないけれど……。
さて、久しぶりに観覧車に乗りに行こう!

精文館書店 商品部
保母明子さん

人を愛すること、愛されること、許されること……。
誰もが心の底で思っていても口に出せないことを、白河三兎はすくいあげて言葉にしてくれているといつもそう思います。

既刊リスト

『角のないケシゴムは嘘を消せない』

『角のないケシゴムは嘘を消せない』
妹の恋人→失踪
兄の恋人→透明人間
「見えない」恋の結末は!?
あなたが“消したい”モノは、何ですか?
講談社ノベルス

『プールの底に眠る』

『プールの底に眠る』
第42回メフィスト賞受賞作
「いつまでも読んでいたかった」――辻村深月講談社ノベルス
講談社文庫