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『愛の徴(しるし)−天国の方角−』近本洋一|講談社ノベルス

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『愛の徴(しるし)−天国の方角−』近本洋一 冲方 丁氏 推薦化け物みたいな才能! 素晴らしく上質! 幾らでも読める。全く長さを感じさせない。ファンタスティックかつ抑制の効いた二つの物語が交わるさまは、息をのむほど美しい。大満足!
著者コメント

この物語は「現代」を舞台にしているものではありません。舞台となっているのは十七世紀のヨーロッパと、ごく近い未来の世界です。だけど、私たちの生きているこの現代と関係ない物語でもないのです。

世界はどうしてこのような(困難で複雑な……)ものなのか? それこそが幾多のミステリーに表現されてきた「謎」の本質とも言えるのではないでしょうか。その謎、つまり私たちの世界の秘密へと、真正面から直接向き合おうとしているのがこの物語です。

物語は最後に、誰でも現実に確認することのできる具体的「事実」に辿り着きます。それが本当に、謎の答え、世界の秘密を解き明かすものとなっているか? その是非はすべてのミステリーと同じく、読むことでしか明らかにできません。この現実世界に生きているあなた自身の「眼」でその事実を確かめてもらいたい……心より、そう願っています!

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一問一答

メフィスト賞に応募したきっかけは?

えらく長いものを書いてしまい、さてこれをどうしよう、と思っていたところ、妻から、メフィスト賞にこそ応募すべし、と勧められたのです。

受賞を知った時、最初に思ったこと。その後、まずしたことは?

泥舟じゃなくて良かった、と。前の回に拙作を推して下さった担当編集〈卯〉氏が「今回、僕はもう大船に乗ってますから」と不思議なことを言って、ひとり大船で船出してしまったので、私は埠頭に置いてけぼりになった気分で、「その大船が泥舟じゃなければいいけど」と心配していたのです。なので、妻に「泥舟じゃなくて良かった!」と言いました。

受賞の知らせを聞いたのはどこ?

何もない空っぽのアパート。自宅が水漏れ工事で、緊急に借りていたのです。

作家を志したきっかけは?

ものを書き始めたのは生きるためですが、作家というのが肩書きなのか職業なのか自意識なのか、まだよくわからないままなのです。早く清く正しく志したいです!

初めて「小説」を書いたのはいつ頃? またどんな作品?

五年前に父親が自殺した男の話を書きました。自分に起きたことを客観的に語るためにはその言葉が「小説」であるべきだと感じて書いた、そのような作品です。

自分で自分にキャッチフレーズをつけるとしたら?

ホンモンのイロモン。

講談社ノベルスで好きな作品をあげるなら?

おそれおおくもその名をあげさせていただくならば『鉄鼠の檻』。

影響を受けた作家、作品は?

五人、五作までとするなら、バーネット『秘密の花園』、大江健三郎『万延元年のフットボール』、リンダ・ハワード『流れ星に祈って』、ジェイムズ・ティプトリーJr.『故郷から10000光年』、C・S・ルイス『ライオンと魔女』。

執筆スタイルは?

ふと気付くとパソコンの前に坐っている、という状態になるのを待つのです。

執筆中かかせないアイテムは?

足を冷やさないためのほかほかカーペット。

執筆中あったエピソードで忘れられないもの。

円形脱毛症を発見。いつできたのかはわかりません。まだ治らない。

受賞作の着想のきっかけは?

ある時、目覚めた妻が「不思議な夢を見たよ」と話をしてくれたのです。それで、その夢の情景の現われる物語を書いて妻に読ませてあげたい、と思いました。

執筆期間はどれくらい?

応募作自体は二ヵ月弱で書きましたが、それを〈卯〉さんと共に半年かけて改稿させて頂きました。〈卯〉さん、本当にありがとうございます。

応募時の「キャッチフレーズ」は?

《愛の真実が心に迫るスリリングな歴史ロマンSF!》でした。まじで? もちろんそりゃまじですよ。なんでそんなこと尋ねるんですか。

次作の構想はありますか?

あります。自信作となる予定です。

読者の方々に一言!

私はものすごくせっかちで、すぐ退屈してしまう性格です。その私が、書いている間ずっと、まるで世界の涯へと航海しているかのように退屈しませんでした。胸の奥で静かに脈打つ鼓動が自分で感じられるような瞬間。この物語で、そんな経験をきっと分かち合えると信じています。

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担当コメント + インタビュー

本作をメフィスト賞応募作としてはじめて読んだ夜のことは、忘れられません。1000枚に及ぶ大長編でありながら、ページを捲る手も文字を追う目も加速するばかり。描かれたドラマに、ペダントリに、そしてミステリに……読みながら真夜中に脳がどんどん覚醒していくような、そんな極上の読書体験を味わったのです。この思いをより多くの方にと、破格のスケールのデビュー作が登場します! ジャンルを超越した「究極のロマンス」に、どうぞご期待ください!

『愛の徴(しるし)―天国の方角―』を一言でいうと?

メフィスト賞だからこその「ザッツ・エンタメ小説」です。

ズバリ、この本の魅力は?

サイエンスとファンタジーとファクトを高次元で融合させながら進行していく、物語それ自体の「おもしろさ」と「美しさ」。そして、現実と虚構それぞれの、クライマックスの「驚き」!

著者・近本洋一さんを一言でいうと?

いつもなにかを書いている方。いわば「回遊魚群的な執筆脳」をお持ちなのでは、という印象です。「群」がポイントです。

受賞に至る経緯を簡単に教えてください。

2012年初頭の応募作『黄金の蛇、緑の草原』を読んで、衝撃を受けました。その後お会いしたときには、とんでもなくスリリングな追加要素を用意されていて、それをもとに加筆修正、半年後に再応募していただいたのが、この受賞作です。

どんな人に読んでほしいですか?

すべての小説ファンの方に! 600ページ近い大長編ではありますが、どなたにも楽しんでいただける物語だと思います。とくに「世界の仕組み」の秘密を知りたい方や、エンタメ小説の可能性の究極に触れたい方には強くお勧めします。

カバーデザインについて、一言。

装丁家・坂野公一さんの力作です。英国ファクトリー・レコードのジャケットたちも真っ青のカッコよさ! 読み終わってから改めて見ていただくとさらに感動します。

今後の刊行スケジュールを教えて下さい。

2014年初春の刊行を目指して、現在第2作を執筆中です。その内容のヒントは……本作の巻末をご覧ください。

担当インタビュー動画はこちらから
リブラリアンの書架

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『愛の徴―天国の方角―』座談会抜粋

『黄金の蛇、緑の草原』(※応募時のタイトル)、一部で大本命と言われている大作ですが、卯さん、いかがでしょうか。

はい。近未来の理系大学院での物語と、十七世紀のヨーロッパでの物語が入れ子構造になった小説です。前回の応募時は、近未来の話が断片的で、読者を拒絶しているのではないかと思うほどハードルの高いものでした。ですが、十七世紀の物語と結末に強い魅力があったのでメフィスト賞に推したんです。座談会の皆さんからのアドバイスも参考にして、修正をお願いしたのが、今回の応募原稿です。

念のため。応募者のみなさん、編集者からのリクエスト以外での改稿応募は禁止ですからね。

SFでもあり、歴史ミステリともいえます。そして! 謎解きの方法が斬新で、小説だからこそのスリルと驚きがありました。改めて、メフィスト賞に推薦します!

気になるところはあるんですが、とにかくすごい! この作品はウチが出さなきゃ! 他の出版社も、講談社の他の部署も出せない本ですよ。

そうですね! 前回も読みましたが、そのときは、言いたいことは分かるけれどもこのままでは伝わらないというもどかしさがありました。が、今回読んで、私は感動すらおぼえました! 新しく登場した女性キャラクターが作中で書くレポートが、近未来と十七世紀とのよい橋渡しになっています。そのため作者のメッセージがかなり伝わるようになったと思います。

物語のメインの読み筋はどこなんでしょうね。そして作者が目指したゴールは何なのでしょう。

読み筋は、ある歴史上の謎と、ある絵画に込められた秘密、ということになるね。それらについて語られる情報量と精度が、またとてつもない。

破格のスケール感で、一読してメフィスト賞であることは間違いないと思いました。

ありがとうございます!

この作品は「奇書のふりをした純愛もの」だと思うんだ。でも、奇書の部分も、きっちり奇書としてまとめないといけない。そうしないと、ラストのメッセージが伝わらないと思います。

そう、それがゴールとしてのテーマなんですよ!
僕の印象ですが、作中の鈴という女性キャラは、『薔薇の名前』に登場するウィリアムとアドソを足して割ったような人物像なんです! 謎に淡々と立ち向かっていく探偵的なところとか……他の部分はネタばれになるのであまり語れませんけど(笑)。

この方は、「日本のウンベルト・エーコ」みたいになってくれるはずです! それでは、この作品もメフィスト賞ということでよろしいでしょうか。

異議なし!

ありがとうございます!!

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読者コメント

『愛の徴(しるし)―天国の方角―』を読んで下さった方、ぜひコメントをお寄せ下さい!

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1. 猫ケ洞とおる 2013-05-30 11:44:44

黄金の蛇の指環を草原の草の根元でひとつひろった
希望とはどうしてここで生きているのかその意味が良く分かること
雨粒も蟻から見ればボウリングのボールが落ちてくるようなもの
つまりその見ていることは見られている側にもわかるということだ
世界とは鏡に映る戯れよ在るも在らぬも光の加減
これからは我と我が身の中にある知恵と言葉で希望を探す
その眺めにたゆたふ時の秘密こそ知らばや春の喜びならん
この世界を直そうと闘っているすべての人のために本は在る

十代に戻った気分でこの本を今読んでいる本は魔法だ

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