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『眼球堂の殺人』周木 律|講談社ノベルス

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『眼球堂の殺人〜The Book〜』周木 律 『愛の徴(しるし)天国の方角』近本洋一 『図書館の魔女』高田大介

 はじめまして、周木律(しゅうき・りつ)です。
  このたび、拙作『眼球堂の殺人〜The Book〜』で第47回メフィスト賞を受賞し、デビューすることとなりました。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて――。

 たとえば、わずかに傾いた屋敷だとか。
  たとえば、正十角形の館だとか。
  たとえば、匣のような施設だとか。
  たとえば、孤島に建てられた研究所だとか。
  昔から、推理小説における奇妙な事件には、奇妙な建物がつきもののように思います。

 奇妙な事件を起こすために、奇妙な建物を建てるのか、それとも、奇妙な建物だからこそ、事件が奇妙なものとなるのか。それは、鶏が先か卵が先かの論争や、ZFC公理系における連続体仮説のとおり、原理的に決定ができない問題なのかもしれません。
  ですが、いずれにせよその2つが、親和性が高い関係にあるものだと評価することはできるのではないかと思います。なぜなら、突拍子もない建物に足を踏み入れた瞬間から、人は、突拍子もない事件を想像し、あるいは期待してしまうものだろうからです。

 この点、「眼球堂」は期待を裏切らない建物だと自負します。

 したがいまして、皆さま方におかれましては、是非とも、この奇妙な眼球堂で起こる奇妙な事件に「目を凝らして」いただき、その上で、もし、この一筋縄ではいかない謎と罠に、真っ向から挑んでいただけましたなら、眼球堂の設計者である建築家 驫木 煬(とどろき・よう)に代わり、心よりの謝意を表したく存じます。

 古式ゆかしくも、どこか新しい――そんな推理小説を目指してみました。
  楽しんでいただけましたなら、これほど嬉しいことはありません。
  あらためまして、どうぞ、よろしくお願いいたします。

 周木律拝

周木 律(しゅうき・りつ)
某国立大学建築学科卒業。
第47回メフィスト賞を本作で受賞。

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メフィスト賞に応募したきっかけは?

応募の理由は、2つあります。
ひとつは、どんな作でも、編集者の方々のひとことコメントがもらえるから。もうひとつは、募集のスパンが4ヵ月と比較的短いから、です。
これは、ことメフィスト賞に応募する人の動機としては、大多数を占める理由だろうと思います。

受賞を知ったとき、最初に思ったことは? その後、まずしたことは?

まず、「素数でよかった」と思いました(第47回受賞ですから)。
その後は小一時間ほど、近辺をうろうろと歩き回りました。そういうときにいかなる態度をとるべきかが、自分でもよく解らなかったからですが、周囲からすれば、かなりの挙動不審にみえたことでしょう。

小説家を志したきっかけは?

人を楽しませる手段に何があるか、と考えたときに、僕にできるのは「小説を書く」ことだったから、でしょうか。

初めて「小説」を書いたのはいつ頃? またどんな作品?

小学校5年生のときの国語の授業です。
「バスに乗ったら、いつの間にか違う世界にいた」というような、いかにも子供らしくありふれた内容のSFで、確か400字詰め原稿用紙で2枚の作でした。
なお、そこから四半世紀の時間と紆余曲折を経て、初めてきちんとした小説を書くに至り、それがメフィスト賞への応募第一作となりました(一言コメント止まりでしたが)。

講談社ノベルスで好きな作品をあげるなら?

綾辻行人さんの「館シリーズ」、京極夏彦さんの「京極堂シリーズ」、森博嗣さんの「S&Mシリーズ」です。
メフィスト賞受賞者の回答としては、オーソドックスではありますが、王道だとも思っています。

影響を受けた作家、作品は?

まず、綾辻行人さん、京極夏彦さん、森博嗣さんのお三方です。しつこいようですが、オーソドックスであり、だからこその王道である前述の作品群からは、非常に多くの影響を受けました。
怪奇小説家としての江戸川乱歩さんと、サイエンス・エッセイストとしてのアイザック・アシモフさんについても、常に僕のお手本となっていると思います。
ただ、誰よりも影響を受けているのは、実は筒井康隆さんです(熱烈なツツイストなのです)。

執筆スタイルは?

特に決めてはいません。たぶん、極端なフリースタイルです。ツールを問わず、いつでも、どこででも書いている(あるいは、考えている)ような気がします。「思いついたが吉日方式」です(名称は今、思いつきました)。

執筆中かかせないアイテムは?

「辞書」です。言葉を知らないので……。
あと、アイテムと言っていいかどうか解りませんが、「書くための時間があること」は絶対に欠かせません。「書くために必要なアイテム」とは「書くための時間だ」ということです。

受賞作『眼球堂の殺人〜The Book〜』、着想のきっかけは?

『眼球堂の殺人』は、方眼紙を前にいろいろと「変な建物」をいたずら書きしているとき(そういう手いたずらを、僕はよくやります)に、ふと思いついたアイディアが原型となっています。これを、ああでもないこうでもないとこねくり回しながら、最終的な形を作り上げていったというわけです。
また、僕が敬愛する人物に、ポール・エルデシュという実在の天才数学者がいます(1996年に故人となりましたが)。この、エピソードに満ちた素敵でおかしな数学者を、物語の中で生き生きと動かしてみたい、そんな願望もまた、きっかけのひとつとなったといえるかもしれません。

執筆期間はどれくらい?

約2ヵ月です。
着想から筆を置くまでは、図面も含めて1ヵ月ほどですが、きちんとした形にするために、そこからさらに1ヵ月をかけて直さざるを得ませんでした。
自分の力不足を痛感しています。

応募時、作品に添付した梗概に書いた「キャッチフコピー」は何?

「読むのは神か、それとも人か。」です。

トリックのアイディアはどんなシチュエーションで思いつく?

その多くは、悲しいことに、その着想を忘れてしまいやすい状況だとか、書き留めておくことが不可能な状況だとかに思いつきます。

次作の構想はありますか?

あります!
また、変な建築物が舞台になりますので、ぜひともご期待をいただきたく存じます。

読者の方々に一言!

数学と建築とミステリが渾然一体となった、一風変わった推理小説ですが、是非ともお楽しみをいただき、どうか今後とも、周木律をご贔屓にしていただければ幸いです。

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周木さんはわずか1年半ほどの間に、メフィスト賞に、新作を次々と応募されました。そのどれもが完成度が高く、読み物として十分な作品でしたが、その中でもこの『眼球堂』のクオリティは群を抜いていました。ミステリの歴史に燦然と輝く、メフィスト賞の系譜を継ぐ、新たなスターの誕生だと、担当編集者も確信しております。どうか、応援よろしくお願いいたします!

―― 『眼球堂の殺人〜The Book〜』を一言でいうと?

担当Y 「館!館!館!」これぞ講談社ノベルス!

―― ズバリ、この本の魅力は?

担当Y 天才たちの素敵な思考と、館の魅力と、謎解きの面白さが堪能できる一作です。

―― 周木律さんを一言でいうと?

担当Y 自動返信型執筆マシーン。
メールの返信が恐ろしく早いです。そして、もちろん執筆のスピードもすごいです。気がつけば、ピリオドの向こう側です。

―― 受賞に至る経緯を簡単に教えてください。

担当Y わずか1年半の間、「メフィスト」が4冊出る間に、9作の応募。そして、そのどれもが高いクオリティの作品で、ともかく、楽しんで書かれているのが伝わってくる原稿……。そして、お会いしてお話ししたときに、「あ、この人は作家になるな」と感じました。それから、数ヵ月。脱稿した原稿を読んで、「なるほど、このデビュー作が生まれるのを待っていたんだ」と納得したものです。

―― どんな人に読んでほしいですか?

担当Y 全人類。……という希望はありますが、もちろん、まずは本格ミステリがお好きな方に。そして、まだ本格ミステリというものをほとんど読んでいない方に読んでいただきたいです。

―― カバーイラストについて、一言。

担当Y 十和田先生、カッコイイですね……。

―― 今後の刊行スケジュールを教えて下さい。

担当Y この夏までに、次作『双孔堂の殺人 〜Double Torus〜』を出版できれば、と企んでいます。双(ふた)つの孔(あな)が空いたドーナツのような建物で起こる驚愕の事件。どうかお楽しみに……!

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「館もの」に真っ向から挑んだ作品です。
将来を嘱望されながらも学界に背を向けた放浪の数学者・十和田と、彼を題材にノンフィクションを書こうとしているルポライターの陸奥という女性が、驫木という世界的建築家が山奥に建てた、眼球堂という奇妙で雄大な建物に招かれます。そこには各界の天才学者や芸術家、政治家などが呼び集められています。そこで、ある人物が百舌(もず)のはやにえのような状況で殺され……。 しかも不可能な状況での殺人が次々と……! まごうことなき…館ミステリとして……! 世に出したい!!

Yさん、すごく熱いですね(笑)。読みやすく、クオリティが高く、この書き手ならではの世界観もあって、修正点が見つからない! と思わせられた作品です。

とても構築力が高い本格ミステリ。館ものをここまで違和感なく読ませるのは魅力ですね。過去にもたくさん応募作があって、引き出しの多い方だと思いますが、まずこの作品で受賞してもらうべきでしょう!

僕は、前応募作のスケール感がすごく好きでしたが、あれはトリックに難があった。この作品はそれ以上のスケール感があり、トリックも素晴らしい。もちろん、メフィスト賞に大賛成です。

今度こそ、喜んでもいいですよね! 誰も、待った、とか言わないよね!? ……やった〜!!

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『眼球堂の殺人 〜The Book〜』を読んで下さった方、ぜひコメントをお寄せ下さい!

4. 佐々木 2013-06-17 10:57:09

本を開いて一気に読み終えてしまいました。非常に面白いです。
『密室』『館』が大好物な自分ですが、館の見取り図を見て驚いてしまったのは初めてな気がします。独創的な舞台に一目惚れしてしまい、グッと引き込まれました。
次回作楽しみにしています。十和田先生面白いです。

3. estrellayh 2013-05-21 14:23:07

右頬をエラリークイーンに、
左頬をアガサクリスティにひっぱたかれたような
鮮烈なデビュー作ですね。
次回作もかなり期待しています。

2. ハギ 2013-05-17 16:00:26

本当に面白かったです。
それぞれのキャラターが天才ならではの強烈な印象を私に持たせました。
途中でおやっと感じた部分があったのですが
その全てがわかった時の私の興奮はピークにたっしていました。
次回の新作も楽しみにしています。

1. ねこまたぎ 2013-04-18 12:17:29

まさに本格!
大変堪能致しました。
次作も楽しみにしています。

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