両手でティーカップを持ち、紅茶を飲む十七歳の少女を見つめながら、黒田伊都子(くろだいつこ)はいたたまれない気持ちになった。
──この子を恐ろしい目に遭わせたくない。
しかし、少女──空閑純(そらしずじゅん)は危険を厭(いと)わず、明日になったら旅立つつもりでいる。今日、大阪から福岡にやってきたばかりだというのに、さらに遠くへ、山奥にある秘密めいた村へと。
母親の行方を追うためとはいえ、大した度胸だ。何が待ちかまえているかわからないので、そんな蛮勇(ばんゆう)を発揮できるのかもしれない。
「街はどうでしたか?」
スプーンでカップをゆっくりと掻き回しながら、伊都子は尋ねる。夕食後に深刻な話が続いていたので、話題を転じたのだ。……