●駅男 定年後も会社に足が向いてしまうのではと不安に駆られる瀬木(59歳)。毎朝駅で見かける、ベンチで新聞を読みふけり電車に乗らないスーツ男の正体とは?
●リボン仲間 長年勤めた会社が倒産し就活に苦労する川端(53歳)は、救いを求めて飛び込んだストリップ劇場である光景を目撃、家族に言えない秘密ができる。
●カントリータイム 実社会でキャリアのある60男がカナダ語学留学に挑む。英語で思い通りに気持を表現できないもどかしさから、若い女子学生を叱ってしまうが。
●花の下にて 夫に先立たれた律子(79歳)は、周囲に怪しまれないように一世一代の大嘘をつく。あまりに老いた自分の姿と高齢者を監視する福祉社会に律子は揺れる。ほか4篇
担当者コメント
著者・佐江衆一さんは東京・蔵前の質店生まれ。幼い頃から、客として訪れる浅草の芸人や踊り子、両国の相撲取り、下町の苦学生の話を耳にして、庶民の人情やエスプリを感じとり、その後の創作に活かしています。今回は自身の体験(海外での取材活動、剣道の段位審査、老親介護など)もベースにして作品を書き上げました。東京スカイツリーの開業で賑わう隅田川界隈の風景も度々登場します。昭和のノスタルジーに溢れ、読めば励みになる一冊です。