今回の作品について。着想のきっかけは?
留学でしょうか。生まれ育った場所や、そこでの常識が海を越えた途端に変わったり、そこで暮らしているうちに、故郷の方が異世界に感じられたり。その時の感覚が、着想のポイントかと。
今回の作品の中で一番好きな(思い入れのある)登場人物は誰ですか。できれば理由も。
四季と遊砂。どちらも友人がモデルになっているからです。
四季は「母国が一番だよ」と、留学する私に忠言した真面目な子。
反対に遊砂は「母国なんぞクソだ」という、奔放な元ルームメイト。
ご自分に似ている登場人物はいますか。
自分の殻に閉じ籠る、という情けない部分は主人公の瞳子かもしれません。
執筆中一番苦労した点は。
ページ数の上限との戦い。
設定上、すごく大きな世界なのですが、今回明かせたのは、ほんの一部。
それでも、きちんと描き出したくてページ配分には苦労しました。
今回の作品を一言でいうと?
タイトルの通り、水族館です。身近にある異世界。そこに棲む生物の話。
どんな人たちに読んでもらいたいですか?
自分のいる世界と地続きのようで、まったく異なる世界を覗き見したい方々でしょうか。
水族館を楽しむ感覚で、安全圏からお楽しみいただければと。
デビューのいきさつを教えてください。
夫の転勤がきっかけで、会社を辞めました。再就職前に一年だけ余暇を取ろうと思い、興味のあったシナリオや小説の執筆を始め、無節操にあちこちの賞に送っていたところ、小松左京賞をいただいたというのが、デビューのきっかけです。
作家にならなかったら、何になっていましたか。
愚痴をこぼしながらも、楽しんで会社員をやっていたと思います。
「講談社ノベルス」で最初に買った作品は。または好きな作品は。
栗本薫さんが好きで、伊集院大介シリーズを買い求めたのが最初。新刊発売を楽しみにして本屋に通っていたところ、京極夏彦さんの『姑獲鳥の夏』に出会い、留学中も新刊は欠かさずロンドン三越の地下で買っていました。その後、森博嗣さんのS&Mシリーズにハマってしまったことも、正直に告白させていただきます。
執筆スタイルを教えてください。
主に自宅の書斎で書いています。必需品は、関係資料を貼り付けたイメージボード。
好きな作家と作品は。
創作のきっかけが中学の時にやっていた演劇なので、寺山修司は不動の一位。「毛皮のマリー」は空で言えるほど。同時期に澁澤龍彦や江戸川乱歩、倉橋由美子も好きだったのですが、理解していたとは思えないので、中二病というやつだったのだと思います。
好きな音楽、映画は。
愛蔵のDVDは大半がイギリス映画です。
再生回数が多いのは、キューブリックのSF三部作でしょうか。
音楽は一番を挙げるならスティング。ザ・ポリスの時代から、ずっと好きです。
現在ハマっていることは何かありますか。
エレベーターライド。エレベスト(エレベーター愛好家)というほどではないにしても、ハマっています。デザインはもちろん、制御や装備の違いなどがあって面白いです。
今後描いてみたいテーマ。題材は。または次作の予定など教えてください。
デビュー作からずっと機械とヒトの関係性を題材に描いていて、引き出しの中にいろいろ残っているので、当面それを描き出すつもりです。次作は、飛行機のお話になると思います。
読者の方にメッセージをお願いします。
この『アクエリアム』の世界は、未だどこにも存在しませんが、間違いなく私たちの日常と地続きです。楽しんでいただけたら、作者としてこれ以上の喜びはありません。