もう10年も前のこと。神宮前のとあるバーで美味しいカクテルを飲みながら当時の担当のS木さんに、
「『メフィスト』に何か連載してみませんか。高田さんの趣味を題材にしたような作品を」
と言われました。そこで、歴史物以外で何か……と二人で(飲みながら)考えたその結果、個人的趣味満載の「千波くんシリーズ」ができあがりました。
そして、どうせならば「日常」に「パズル」を持ち込むのではなく、「パズル」に「日常」をはめ込んでしまえ――ということで、こういった作風になってしまいました。
しかし実はこちらも当時は「QED」同様、長期連載は全く考えておらず、4月の話から1月の話までの短編10本(つまり、浪人期間中の話)で終了する予定でしたが、意外にも(?)読者のみなさんからの反応が良く、今回の『千葉千波の怪奇日記 化けて出る』で5冊目――都合、短編20本・長編1本の上梓となりました。
みなさんには、心から感謝しています。ありがとうございました。
その「千波くん」も、今回の作品を以て完結となります。こちらも個人的にとても愛着があったシリーズなので、「QED」とはまた違った意味で、万感こもごも到るものがあります。
また、今回は特別編として「立って飲む―『立ち呑みの日』殺人事件―」を書き下ろしました。
これは、11月11日に都内で実際に開催される「立ち呑みの日」イベントとのコラボ作品という初めての試みです。
ぜひみなさんも千波くんやぴいくんたちとご一緒に、怪しげなパラレルワールドに迷い込んでください。但し、引き返せなくなっても責任は取れません。本当だよ。
高田崇史(たかだ・たかふみ)
昭和33年東京都生まれ。明治薬科大学卒。
『QED 百人一首の呪』(講談社ノベルス)で、第9回メフィスト賞を受賞しデビュー。