受賞作「琅邪の鬼」は、ご自身何作目の作品ですか。
実は初めて書いた小説です。
たくさんある構想の中の一つでした。
作品提出までには、ちょっと変わったご苦労があったとか?
家族全員が本好きで、作品が出来たときに皆に読んでもらったんです。とても厳しいチェックでした。家族なので容赦ないですから(笑)。
何故メフィスト賞を選ばれたのでしょう?
一つは編集者が全て読むということ。次に全ての応募作に、座談会でのコメントなり一行コメントなり、必ず評価をしてくれるということです。
メフィスト賞受賞の知らせを聞いて、何を感じましたか?
最初は詐欺かと思いました(笑)。
1本目で受賞するとは思っていませんでした。何しろ1年間に5本執筆し、それを5年間で25本応募して編集者にインパクトを与え、デビューしようという計画でしたから。
メフィスト賞受賞前、受賞後、何か変わったことはありますか。
読むと書くとは大違いであるということがわかりました。自分勝手に書くということと、読者にわかってもらおう、面白いと感じてもらおうと思って書くことは大違いですね。
デビューを目指している方々に伝えたいことはありますか。
「あきらめないこと」です。好きなことを続けていけば、努力を続ければ道は開ける、と。
「丸山天寿」というペンネームの由来を教えて下さい。
自分のやっている古書店の名前、「天寿堂書店」からです。実はその「天寿」はとある昔の少女漫画に出てくる「天寿丸」というキャラクターの名前からきています。
お好きなミステリー作品、または作家を教えて下さい。
チェスタトンの「ブラウン神父」シリーズ、都筑道夫さんの「なめくじ長屋捕物さわぎ」シリーズ、泡坂妻夫さんの「亜愛一郎」シリーズです。意外な動機で驚かされる作品が好きですね。それ以外には島田荘司さんの『占星術殺人事件』ですが、これはトリックに驚かされました。また内田康夫さんのデビュー作『死者の木霊』も好きです。
講談社ノベルスの作品で、特に印象に残る作品は。
高田崇史さんの作品です。全て読んでいますが、あの発想はどこからくるのでしょうか。本当にすごいと思います。
次回作の構想を少し教えて下さい。
『琅邪の鬼』の続編を出したいと考えています。あとは家族内座談会のOKが出れば(笑)。
丸山天寿 (まるやま・てんじゅ)
1954年、長崎県生まれ。
高校卒業後、陸上自衛隊勤務を経て、古書店を開業。
ライフワークである邪馬台国研究を進めるうち、自身初の小説となる『琅邪の鬼』を着想。視覚障害を抱えつつも執筆を進め、2010年、第44回メフィスト賞を受賞し、デビューを果たす。
講談社ノベルスの部長も、文庫の部長も、いつも見る目が厳しい校正者も、口を揃えて「これは面白い!」と興奮した傑作がメフィスト賞より誕生します。読み手の心をグッとひきよせる仕掛け、生き生きとした人物像、濃厚な情報量を書ききるこの新人はただ者ではありません! それもそのはず、丸山氏はメフィスト賞史上最年長、55歳でのデビューで、さらには古書店店主として、圧倒的な読書量を誇っているからなのです。「応募先にメフィスト賞を選んでいただき本当に有難うございました」と担当の私も感動の一冊! メフィスト史に残るミステリー&冒険活劇をぜひお読み下さい。