初めまして。第50回というキリのいいメフィスト賞を受賞した早坂吝と申します。
『○○○○○○○○殺人事件』という受賞作のタイトルを見て、目を丸くされた方も多いのではないでしょうか。○の中には事件の内容を端的に言い表した八文字のことわざが入るので、それを当てよという新感覚の「タイトル当て」ミステリです。後半の急展開に気を取られさえしなければ、難易度はそこまで高くないと思いますので、ぜひ挑戦してみてください。事前に読まれた書店員さんの中には当てた方もいらっしゃるそうです。
事件は、孤島・仮面・密室が登場する古式ゆかしきものです。しかし、仮面と密室については新しい使い方に挑戦。本格ミステリに一家言持つマニアの方々にもご満足いただける作品を目指しました。
さて、ここまでで「新」という文字が二度出てきました。私は新しいことをやるのが好きなのです。王道の大切さは重々承知していますが、それでもやはり、誰も通ったことのない道を切り開くことに創作の喜びを感じます。これからもどんどん自分が新しいと思う作品を書いていきますので、応援していただけるととても嬉しいです。
早坂 吝(はやさか・やぶさか)
1988年、大阪府生まれ。京都大学文学部卒業。
2014年、『○○○○○○○○殺人事件』で第50回メフィスト賞を受賞し、デビュー。
なぜ応募先にメフィスト賞を選んだのですか?
メフィスト賞好きの友人がいたので、元々身近な存在でした。書き始めた頃は手当たり次第いろいろな賞に応募していましたが、「他人とは違うまったく新しい小説を書く!」というスタイルが定まった時、斬新さを何より重視するメフィスト賞の存在が懐かしく思い出されてきたのです。
受賞を知ったとき、最初に思ったことは? その後、まずしたことは?
初恋の人に自慢しようと思いました。しかしその後自作を読み返して、やっぱりやめようと思い直しました。
受賞の知らせを聞いたのはどこ?
ホテルの喫茶店で、担当さんと打ち合わせ中に。それより編集部からファーストコンタクトがあった際のエピソードが面白いので紹介します。東京03からの着歴に勢い込んで折り返したはいいものの、そこは仕事帰りに立ち寄ったスーパーの店内。お客様アンケート用の紙とペンを駆使して、担当さんからの伝達事項をメモしました。
作家を志したきっかけは?
高2の頃、僕はストレス解消のために私小説の中で人を殺すという陰険なことをやっていました。そんなある日、クラスのオタクを仕切っている女子が声を掛けてきました。「ウチらと一緒に文藝やらへん?」そして僕は人に読んでもらう喜びを知るとともに、生まれて初めてやりたいことができたのです。
初めて「小説」を書いたのはいつ頃? またどんな作品?
小6のテスト中、クラスメートが問題用紙の裏に、仰々しい西欧名の人物ばかりが出てくるギャグ小説(仰々しさそれ自体が笑い所という高度なもの)を書き、周囲を笑わせていました。僕も対抗して書きましたが、一家心中という辛気臭いものしか出来上がらず、みんなの反応も「お、おう」という感じで、敗北感を覚えました。
講談社ノベルスで好きな作品をあげるなら?
色々あるので、メフィスト賞受賞作(全部読みました)から特に好きな3作を。難易度の高い大ネタを美しくまとめた『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』、言葉さえあれば何でもできると確信させてくれた『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』、首切りの理由が素晴らしい『『クロック城』殺人事件』。
影響を受けた作家、作品は?
小中学生の頃は曾祖母宅のクリスティを読み耽り、高校になると綾辻行人で新本格を知り、大学ではクイーンと麻耶雄嵩で犯人限定を学びました。ミステリ以外では安部公房。本格推理と前衛小説はどちらも構造を重視するという意味で似ているというのが持論ですが、誰にも理解されないため、いつか実証したいと思っています。
執筆スタイルは?
「迷ったらまず書いてみろ」です。プロットが未完成でも、何となく書き出しているうちに良いネタを思い付き、いつの間にか整合性が取れている(気がする)ということがしばしばあります。まずは書き始めないと進展はありません! そう、書き始めないと……(涙)
執筆中かかせないアイテムは?
古今東西の音楽を奏でられる義理の妹「りお様」……という設定のデジタルオーディオプレイヤー「Rio SU10」……が壊れたのでその人格をコピーした「ウォークマンNW-S756」。ノイズキャンセリングって凄い技術ですね!
執筆期間はどれくらい?
4ヵ月程度です。メフィスト賞応募にあたって、毎号1作送るのを目標にしていました。1作目と2作目は間に合ったのですが、3作目である『○○○○○○○○殺人事件』がギリギリ間に合わず、次号に回されてしまいました。しかしそのおかげで今の担当さんの目に止まったのかと思うと、逆に良かったのかもしれません。
読者の方々に一言!
今まで誰も読んだことがない、まったく新しい作品を書いていきたいと思っています。そのために必要不可欠なのはきっと論理の飛躍。画面外に飛び出すマリオ2のスーパージャンプ台のように、狭い枠組みを突き破ってどこまでも飛んでいきたい。人間の思考に限界はないと信じています。
えっ!? えっっ!? えーっ!!?? 何だこのミステリー!!
──ジュンク堂書店西宮店 水口真佐美さん
あまりの騙されっぷりに晴れ渡る南国の空のように爽快だ!
──文教堂書店西葛西店 水野知博さん
全てが伏線でした。もう一度読みたくなる「読み直しミステリー」の誕生です!
──MARUZEN名古屋栄店 竹腰香里さん
ちゃんと「本格」なのにちゃんと「メフィスト」な快作。
どうやって売り込めばいいんだ!!
──紀伊國屋書店渋谷店 竹村真志さん
本格ミステリーでありながら、ところどころに笑いがあり、そしてまさかまさかの結末。
騙されたと思って読んだ甲斐がありました!
──SHIBUYA TSUTAYA 内山はるかさん
閉塞感を覚える今のような時代に必要とされる本なのだ!
──さわや書店フェザン店 松本大介さん