『キウイγは時計仕掛け』
森博嗣
新刊が出るとき、出版社から、読者向けのコメントを求められることが多いのですが、僕はこれまで、自分の本についてはすべて、発行日にコメントをウェブで発表していますし、そのすべてを今でも読むことができます。
たとえば、Gシリーズは、こちら(http://www001.upp.so-net.ne.jp/mori/myst/indexjpeg/G1.html) にありますので、もし万が一、作者のコメントが見たいという方はご覧下さい。
Gシリーズをスタートさせたのは、9年以上まえになります。そのときに、このシリーズは、「ミステリィについて自分なりに見直し、あまりトリッキィなものではなく、どろどろしたものでもなく、真正面から誠実に、シンプルできめの細かい作品を……」と述べています。また、「ナチュラルでアキュラシィな作り」を目指したいとも書きました(9年もまえだから、初々しいですね)。今回が9作めになりますが、この最初のデザインどおりの路線をずっと維持し、少しずつ目標へと近づいている、と自分では評価しています(少しずつにしているのは、これがエンタテインメントだからです)。
現実の社会に目を向けると、事故も事件もすべて謎は謎のまま、トリックもまた真実の在処も、なかなか第三者の前には現れません。それこそが「リアル」というもの。「事実は小説より奇なり」と言いますが、その事実くらい奇である小説も書けるのでは、と思ったのです。
さて、Gシリーズは残すところあと3作になりました。このあと、また少し時間が飛びます。2014年は、Xシリーズに戻って、2作を発行できたら良いな、と考えています(いずれもまだ書いていないので、大きなことはいえませんし、そもそも、大きいことではありません)。
森博嗣(もり・ひろし) 1957年12月7日愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部助教授として勤務するかたわら、1996年、『すべてがFになる』 (講談社ノベルス)で第1回メフィスト賞を受賞し、ミステリィ作家としてデビュー。以後、犀川助教授・西之園萌絵のS&Mシリーズや、瀬在丸紅子たちのVシリーズ、『φは壊れたね』から始まるGシリーズ、『イナイ×イナイ』からのXシリーズなどを執筆。ほかに、 『女王の百年密室』『スカイ・クロラ』『喜嶋先生の静かな世界』などの小説や、『森博嗣のミステリィ工作室』『工作少年の日々』『つぶやきのクリーム』などのエッセイ、ささき すばる氏との絵本『悪戯王子と猫の物語』、庭園鉄道敷設レポート『庭園鉄道趣味 鉄道に乗れる庭』など多くの作品を発表し、人気を博している。
Gシリーズ最新作は、実にオールスターキャストです。
前作『ジグβは神ですか』でも時間を超えて、多くの懐かしい顔が登場しました。しかし、今回は犀川創平先生です。しかも電話とかメールとかでの登場ではありません。生犀川先生です(いえ、生ではありませんが)。西之園萌絵准教授(!)も一緒です。国枝桃子先生も相変わらずです。S&Mシリーズのファンにとっては、嬉しい一作だと思います。
もちろん加部谷恵美、雨宮純、山吹早月、海月及介らも学会に参加しています。学会を通して描かれる彼らの成長に、目を細めました。
10月に『喜嶋先生の静かな世界』の講談社文庫版が刊行されました。そこにも描かれた研究すること学ぶことへの真摯な姿勢を『キウイγは時計仕掛け』でも感じることができます。
背筋が伸びる思いがする。そんな書下ろし最新刊。どうぞおたのしみください。
私立C大学の学生である、加部谷、海月、山吹らが巻き込まれる事件の背後に潜む怪しい集団の正体は……? S&Mシリーズ、Vシリーズのキャラクタも再登場する。
『φ(ファイ)は壊れたね』
講談社ノベルス
講談社文庫
D2大学院生、西之園萌絵、
ふたたび事件に遭遇。
密室の宙吊り死体!おもちゃ箱のように過剰に装飾されたマンションの一室に芸大生の宙吊り死体が!
現場は密室状態。死体発見の一部始終は、室内に仕掛けられたビデオで録画されていた。
そのビデオのタイトルは『φは壊れたね』。
D2大学院生、西之園萌絵が学生たちと事件の謎を追及する。
『θ(シータ)は遊んでくれたよ』
講談社ノベルス
講談社文庫
転落死体に印されていたのは
謎のマーク「θ」……。
飛び降り自殺とされた男性死体の額には「θ」と描かれていた。
半月後には手のひらに同じマークのある女性の死体が。
さらに、その後発見された複数の転落死体に印されていた「θ」。
自殺? 連続殺人? 「θ」の意味するものは?
N大病院に勤める旧友、反町愛から事件の情報を得た西之園萌絵らの推理は……。
『τ(タウ)になるまで待って』
講談社ノベルス
講談社文庫
超能力者の洋館での惨劇!
森ミステリィが館モノに!?
“嵐の山荘”で起こる“密室殺人”!
森林の中に佇立する〈伽羅離館〉。
“超能力者”神居静哉の別荘であるこの洋館を、七名の人物が訪れた。
雷鳴、閉ざされた扉、つながらない電話、晩餐の後に起きる密室殺人。
被害者が殺される直前に聴いていたラジオドラマは『τになるまで待って』。
『ε(イプシロン)に誓って』
講談社ノベルス
講談社文庫
ジャックされた高速バスに山吹と加部谷が!!
仕掛けられた爆弾、《ε》の名を持つ謎の団体……!?
山吹早月と加部谷恵美が乗車していた東京発中部国際空港行きの高速バスがジャックされた。犯人グループは、都市部に爆弾を仕掛けたという声明を出していた。
乗客名簿には《εに誓って》という名前の謎の団体客が。
《φは壊れたね》から続く不可思議な事件の連鎖を解く鍵を西之園萌絵らは見出すことができるのか?
『λ(ラムダ)に歯がない』
講談社ノベルス
講談社文庫
身元不明の四人の男の死体につきまとう「λ」の文字!!
密室大量殺人? 一連の事件との関連は!?
密室状態の研究所で発見された身元不明の四人の銃殺体。それぞれのポケットには「λに歯がない」と記されたカード。そして死体には……歯がなかった。
四人の被害者の関係、「φ」からはじまる一連の事件との関連、犯人の脱出経路──すべて不明。
事件を推理する西之園萌絵は、自ら封印していた過去と対峙することになる。
『η(イータ)なのに夢のよう』
講談社ノベルス
講談社文庫
事件の核心には、あの天才の姿があるのか!?
絶対に見逃せない、Gシリーズの転換点!!
地上十二メートルの松の枝に首吊り死体が!
遺されていたのは「ηなのに夢のよう」と書かれたメッセージ。不可思議な場所で「η」の首吊り自殺が相次ぐなか、西之園萌絵は、両親を失った十年まえの飛行機事故の原因を知らされる。
「φ」「θ」「τ」「ε」「λ」と続いてきた一連の事件と天才・真賀田四季との関連は証明されるのか?
『目薬α(アルファ)で殺菌します』
講談社ノベルス
講談社文庫
劇物入りの目薬に刻まれた「α」の文字!!
繋がっていく事件!
神戸で劇物の入った目薬が発見された。目薬の名には「α」の文字が。
その頃、那古野では加部谷恵美が変死体を発見する。死体が握り締めていたのは、やはり目薬「α」! 探偵・赤柳初朗は調査を始めるが、事件の背後には、またも謎の組織の影が……?
『ジグβは神ですか』
講談社ノベルス
ついに姿を現した天才博士。
Gシリーズ最大の衝撃!芸術家たちが自給自足の生活を営む宗教施設・美之里(びのさと)。
夏休みを利用しそこを訪れた加部谷恵美たちは、調査のため足を運んでいた旧知の探偵と再会を果たす。
そんななか、芸術家の一人が全裸で棺に入れられ、ラッピングを施された状態で殺されているのが発見される。
見え隠れするギリシャ文字「β(ベータ)」と、あの天才博士の影。
萌絵が、紅子が、椙田(すぎた)が、時間を超えて交叉する――!
第一回メフィスト賞を受賞した
『すべてがFになる』から連なる十作のシリーズ
十四歳のとき両親殺害の罪に問われ、孤島の研究所に閉じこもった天才工学博士、真賀田四季。教え子の西之園萌絵とともに、島を訪れたN大学工学部助教授、犀川創平は、一週間外部との交信を断っていた博士の部屋に入ろうとした。その瞬間、進み出てきたのはウエディングドレスを着た女の死体。そして、部屋に残されていたコンピュータに記されていたのは「すべてがFになる」という意味不明の言葉だった。(『すべてがFになる』)
その後、犀川と萌絵は、衆人環視の低温度実験室での密室殺人事件、奇術師の脱出マジック中の殺人事件など、数々の事件に巻き込まれていく。
『すべてがFになる』
講談社ノベルス
講談社文庫
密室から飛び出した死体。
究極の謎解きミステリィ。
『冷たい密室と博士たち』
講談社ノベルス
講談社文庫
衆人環視のなか、実験室で起きた
不可思議な密室殺人劇。
『笑わない数学者』
講談社ノベルス
講談社文庫
消えたオリオン像の謎、二つの殺人。
天才数学者が仕掛けたトリックとは。
『詩的私的ジャック』
講談社ノベルス
講談社文庫
歌詞を真似た連続殺人事件。
犯人は人気ロック歌手?
『封印再度』
講談社ノベルス
講談社文庫
不思議な家宝と、親子二代にわたる謎の
死に、犀川&萌絵が挑む。
『今はもうない』
講談社ノベルス
講談社文庫
嵐の山荘で、美人姉妹が殺された。
一夏のアバンチュールの行方は?
『幻惑の死と使途』
講談社ノベルス
講談社文庫
天才奇術師、死してなお奇跡を呼ぶ。
事件は奇数章だけで描かれる。
『数奇にして模型』
講談社ノベルス
講談社文庫
密室には、首を切断された女性モデルと
容疑者。謎が複雑に絡み合う。
『夏のレプリカ』
講談社ノベルス
講談社文庫
眩い夏、不可解な誘拐事件。
真実は、偶数章で明かされる。
『有限と微小のパン』
講談社ノベルス
講談社文庫
テーマパークで次々と起こる殺人。
背後にはあの「天才」の影が。
没落令嬢・瀬在丸紅子と、阿漕荘の人々を襲うミステリィな日常!
ここ数年、那古野市には「数字にこだわる」殺人犯が跋扈している。
今年のターゲットなのか、六月六日、四十四歳になる小田原静江に脅迫めいた手紙が届いた。
探偵・保呂草は依頼を受け「阿漕荘」に住む面々と桜鳴六画邸を監視するが、衆人環視の密室で静江は殺されてしまう。(『黒猫の三角』)
私立探偵・保呂草潤平が住むアパート阿漕荘には、女装癖のある武道家の大学生小鳥遊練無、その友人の香具山紫子らが住む。彼らが遭遇する事件を、阿漕荘の近くに住む没落した旧家の令嬢・瀬在丸紅子が解決する。
シリーズに登場する人物たちに隠された謎とは……!?
『黒猫の三角』
講談社ノベルス
講談社文庫
一年に一度、決まったルールに従って起こる殺人事件!
衆人環視の密室に挑む!
『人形式モナリザ』
講談社ノベルス
講談社文庫
乙女文楽演者の死と二年まえの悪魔を
崇拝する青年の死に関連は?
『月は幽咽のデバイス』
講談社ノベルス
講談社文庫
薔薇屋敷あるいは月夜邸と呼ばれるその屋敷には、オオカミ男が出るという奇妙な噂があった。
『夢・出逢い・魔性』
講談社ノベルス
講談社文庫
夢の中の恋人に殺されたプロデューサ!
小鳥遊練無はアイドルの少女と
行方不明に……。
『魔剣天翔』
講談社ノベルス
講談社文庫
アクロバット飛行中の二人乗り航空機。高空に浮かぶその完全密室で起こった殺人。
『恋恋蓮歩の演習』
講談社ノベルス
講談社文庫
世界一周中の豪華客船ヒミコ号に
持ち込まれた天才画家・関根朔太の
自画像を巡る陰謀!
『六人の超音波科学者』
講談社ノベルス
講談社文庫
山中深くに位置し、橋によってのみ外界と接する、土井超音波研究所で発見された死体!
『捩れ屋敷の利鈍』
講談社ノベルス
講談社文庫
メビウスの帯構造の密室から、
秘宝エンジェル・マヌーヴァが消え、
死体が発見される!
『朽ちる散る落ちる』
講談社ノベルス
講談社文庫
研究所の地下に隠された謎の施設。
空前の地下密室と前代未聞の宇宙密室の秘密を暴く。
『赤緑黒白』
講談社ノベルス
講談社文庫
赤に、緑に、彩られた塗装死体が次々と発見される。美しく悽愴な連続殺人に
潜む謎!
すべての事件の鍵を握る秘められた天才の真実に迫る!
天才・真賀田四季は何を感じ、考えていたのか─。
『すべてがFになる』から始まる一連の物語に秘められた驚愕の真実がつぎつぎと明らかに。
シリーズを貫く登場人物たちに隠された繋がりが見えてくる。
美術品鑑定業を営みながらも、探偵としての調査も行っている椙田事務所。その所員たちの前に次々と事件が。
『イナイ×イナイ Peekaboo』
講談社ノベルス
講談社文庫
屋敷の地下で密かに育まれる凄惨な事件の芽!
「私の兄を捜していただきたいのです」
美術品鑑定を生業とする椙田事務所を訪れた黒髪の美人・佐竹千鶴はこう切り出した。
都心の一等地に佇立する広大な佐竹屋敷、美しき双子、数十年来、地下牢に閉じ込められているという行方不明の兄・鎮夫。
そして自ら《探偵》を名乗る男が登場する。
旧家で渦巻く凄惨な事件の香り……。
『キラレ×キラレ Cutthroat』
講談社ノベルス
講談社文庫
満員電車に出没する切り裂き魔の正体は!?
「この頃、話題になっている、電車の切り裂き魔なんだけれど─」
三十代の女性が満員の車内で、ナイフのようなもので襲われる事件が連続する。
《探偵》鷹知祐一朗と小川令子は、被害者が同じクリニックに通っていた事実をつきとめるが、その矢先、新たな切り裂き魔事件が発生し、さらには殺人事件へと─。
犯行の異常な動機が浮かび上がるとき、明らかになるものとは……。
『タカイ×タカイ Crucifixion』
講談社ノベルス
講談社文庫
地上十五メートルに掲げられた他殺死体!
「あんな高いところに、どうやって死体を上げたのでしょう?」
有名マジシャン・牧村亜佐美の自宅敷地内で発見された他殺死体は、奇妙なことに、地上約十五メートルのポールの上に掲げられていた。
被害者は、前夜ファンと牧村の会食中に消えたマネージャだった。
事件関係者の調査依頼を受けた《探偵》鷹知祐一朗は、複雑に絡み合う人間関係の糸を解きほぐし、犯人の意図と事件の意外な真相に迫る。