望月さん担当編集のYです。
まずは、無貌伝シリーズ第5弾、『無貌伝 〜探偵の証〜』お疲れ様でした!
こちらこそ、お疲れ様でした。いやぁ、無事に発売されて良かった……。
メフィスト賞デビューのいきさつ
前にも書いたことがありますが、本当は先輩が担当になるはずだったのを、あまりの面白さに惚れこんで、絶対僕が担当したい! と熱烈志願したんですよ。
そうでしたね。ありがとうございます。
その頃、望月さんはまだ現役の学生で。
メフィスト賞受賞作『無貌伝 〜双児の子ら〜』が出たのが2009年1月だから、受賞が決まったのが2008年。4年ほど前ですね。確かに学生でした。
お互いに若かったですねえ……(遠い目)。なにしろ、僕が初めて担当するメフィスト賞作品だったんで、かなり緊張して受賞の電話をかけた記憶が。そしたら……。
僕は学校帰りのバスの中でしたね……。
「移動中なのであとでかけ直して下さい」的なそっけない返答が。僕はすっごいハイテンションだったんで、ガクッ! ときたのを憶えています。
てっきり詐欺かと(笑)。実はその前、メフィスト賞に4作くらい投稿していたんですよ。最初の投稿作が座談会で取り上げられたので、すっかりイケる気になって投稿を続けたんだけど、そのあと3回くらいずっとひとことコメントが続き……。
「無貌伝」シリーズの構想
かなり初期から、現在の話くらいの構想はできていましたよね。
そうですね。メールや電話でやりとりしながら、いろいろと案を練ってました。
結局、サイドストーリー(『無貌伝 〜綺譚会の惨劇〜』)や過去の話(『無貌伝 〜人形姫(ガラテア)の産声〜』)などにいって、そして今回……。驚愕のラスト!! ここで詳細は語れませんが、これは本当にびっくりします。望月さん! こんな衝撃の展開にしてしまって、次巻は大丈夫ですか……!?
大丈夫じゃないかも。どうしましょうね(笑)。
最初は「伝奇×ミステリ」で始まった「無貌伝」シリーズですが、その後、少年漫画的なバトルや望の成長譚などの要素も入ってきて、さらにここ2作は、大逆転につぐ大逆転、という展開なのですごく強いヒキ(結末のインパクト)があります。作家さんや書評家さんでも、楽しみにしてくださっている方が多いです。
ありがたいですね。最初の3作は単発もので書いてきたんですが、4作目『無貌伝 〜綺譚会の惨劇〜』を書いたら、「ヒキ」を作るのが面白くなって。それで5作目『無貌伝 〜探偵の証〜』もそうしてしまいました。
今回の「ヒキ」は秀逸ですよ! それだけじゃなくて中盤の盛り上がりも密度が濃くて凄い。
次から次へと、望は試練に巻き込まれ、間違いなくシリーズ最大のピンチを迎えますから。この中盤の盛り上がりは、本来最終巻にくる予定で考えていたんです。ただ、今作を書いているうちに、ちょっと弱いな、と感じて中盤に様々などんでん返しを、そしてラストに意外な展開をもってきました。出来上がってみると、シリーズの中で一番いい出来になったと思っています。
僕もですよ!! 「シリーズ最高傑作」だと思います。今作『無貌伝 〜探偵の証〜』は、熱量、密度、スピード感、すべてにおいて最高ですよ!
「思い入れ」という意味では3作目『無貌伝〜人形姫(ガラテア)の産声〜』が一番です。時系列でいってシリーズ一番最初の話というのもあるからですかね。ですが、自分でも今作が一番よく書けた、と思ってます。
ですね。たくさんの読者に読んで欲しいです。
「無貌伝」シリーズの裏テーマとは!? そして、次回作は……!?
……実は「無貌伝」シリーズ、裏テーマとして「横溝正史的世界観でのジョジョ(『ジョジョの奇妙な冒険』荒木飛呂彦・著)」というのが、ある。
そうですね。ありますね(笑)。否が応でも。
他のメフィスト賞作家も少なからず影響受けてる方が多いですね。
……で、そんな物語の次回作ですが。
完結編です。
……言ってしまったっっ! 読みどころはどうなるんでしょう?
前半は秋津や遥の話になりますね。あと今回の『無貌伝 〜探偵の証〜』までの5作で、すべての伏線は張り終えているので……。
今回を超える衝撃が、ある。
ですね。
望月さん、最終巻はもう少し早く出しましょうよ!
なるべく早く書こうとは思っているんですよ!! 来年秋までには出したいですね。あと『無貌伝 〜双児の子ら〜』が文庫化されて、10月16日に発売になります。原稿にはかなり手をいれましたし、読みやすくなったと思いますので、ぜひ新しい読者にも読んでいただければ、と。
お忙しいとは思いますが、読者の方の期待に応えて頑張って下さい! ありがとうございました。
第40回メフィスト賞受賞作!
『無貌伝 〜双児の子ら〜』
講談社ノベルス
人と“ヒトデナシ”と呼ばれる怪異が共存していた世界――。名探偵・秋津は、怪盗・無貌によって「顔」を奪われ、失意の日々を送っていた。しかし彼のもとに、親に捨てられた孤高の少年・望が突然あらわれ、隠し持った銃を突きつける! そんな二人の前に、無貌から次の犯行予告が! 狙われたのは鉄道王一族の一人娘、榎木芹――。次々とまき起こる怪異と連続殺人事件! “ヒトデナシ”に翻弄される望たちが目にした真実とは!?
デビュー作にして、今のところ、最も手のかかった作品。就職活動の傍ら、ひいひい苦しみながら書き上げ、これがダメだったら作家になるのは諦めようと思いながら投稿しました。メフィスト賞受賞が決まった後も、全部で800ページあるのを200ページけずって200ページ足すという大改稿を経てようやく出版。なのに最近文庫化のために読み返したら色々わかりづらくて、これまた結構直してます。
古村 望 この物語の主人公
秋津承一郎 探偵
溝口 敦 首都中央警察捜査五課の刑事
井之上茜 同上
<榎木家の人々>
榎木次郎 榎木家の当主
榎木一郎 次郎の兄
榎木創一 次郎の長男
榎木早苗 創一の妻
榎木清彦 創一の長男
榎木霞 創一の長女
榎木創次 次郎の次男
榎木綾子 創次の妻
榎木真人 創次の長男(養子)
榎木芹 創次の長女
浮田新造 榎木家の使用人
浮田花江 榎木家の使用人。新造の妻
川渕竹彦 早苗の兄
園田隆夫 芹の婚約者
木戸正治 常道鉄道の重役
<ヒトデナシ>
無貌 怪盗
悪夢のように面白い。――西尾維新
『無貌伝 〜夢境ホテルの午睡〜』
講談社ノベルス
怪盗・無貌……それは世界が畏怖する生ける怪異。探偵・秋津とその助手・望は、宿敵無貌逮捕の報を受け、夏原ホテル――別名「夢境ホテル」へと向かった。そこには、殺人鬼探偵をはじめ、一癖も二癖もありそうな宿泊客ばかりが……。やがて、ホテルの一室で刺殺死体が発見される! 探偵たちを嘲笑うかのように繰り返される殺人。「夢境」の彼方に隠された事件の真実を、望は追う!!
今のところ、最もお気に入りの作品。何が気に入っているかといえば、やはり夢のホテルという設定です。子供の頃から、よく目をつぶって理想郷のような場所を走り回る空想をしていたのですが、この話における夢のホテルはそうした空想を凝縮した場所です。書いていたのが修論執筆、卒業、引っ越し、入社、研修など、慌ただしく、しんどい時期だったので、ぼくの現実逃避願望が形になった作品でもあります。
古村 望 探偵助手
秋津承一郎 探偵
遥 秋津の妻
岬 遥の友人
今野純 探偵事務所が入るビルの管理人の孫娘
溝口 敦 首都中央警察捜査五課の刑事
井之上茜 同上
医師 無貌の協力者
<長靴友の会>
会長 本名不詳
御堂八雲 三探偵の一人
近松独善 三探偵の一人
<ヒトデナシ>
無貌 怪盗
<夏原ホテルの宿泊客>
八木沼 詐欺師
建太 八木沼を善人と信じる弟子
殺し屋 殺しのターゲットを追う男
蒐集者 殺人事件に関わるものを集める男
淑子 認知症の老女
尾崎 手術ミスをした医者
佳美 尾崎を手伝う看護師
マヘリア・ゲイブル 国立特殊生物研究所所長
繁 病気の治療をしていた少年
孤島に棲む人形に命が宿るとき惨劇の幕が上がる!
『無貌伝 〜人形姫(ガラテア)の産声〜』
講談社ノベルス
これは在りし日の名探偵と生まれいずる怪人の物語――。
「人形を見せてあげる」遥はそう言って、怪異が集まる島に秋津を誘った。そこに住むのは、幼き彼女の姿をした人形と、男たち。遥の失踪。消えた一日の記憶。破られた封印……。命の灯が一つ消えるたび、一体の人形が動き出す。孤島に秘められた悲愴な真実に秋津はたどりつけるのか!?
今のところ、最も思い入れの深い作品。人形という存在は子供の頃も今も怖いです。
なんだか子供時代の忘れてしまった何か、思い出すべきではないのに一歩間違えると思い出してしまいそうな何かと強く結びついているような気がして、それゆえに強く惹かれるものを感じます。自分の中で整理がついていない諸々を封じ込めようと試みた作品ゆえ、特別な愛着があるのかもしれません。
秋津承一郎 大学生
岬 遥 秋津の友人
溝口 敦 秋津の友人
<主なヒトデナシ>
無貌 魂と人間のヒトデナシ
踏果 断絶と水のヒトデナシ
憎此 永遠と炎のヒトデナシ
永引 再生と維持のヒトデナシ
災門 眠りと沼のヒトデナシ
巾裂 争いと力のヒトデナシ
鳴原 結界と秩序のヒトデナシ
一初瀬 生命と刃のヒトデナシ