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『子どもの王様』殊能将之|講談社ノベルス

講談社ノベルス

『子どもの王様』殊能将之 団地に出没する王様の正体は!? 少年の勇気は、残酷な世界の秘密を照らし出す!

あとがき

 本書は二〇〇三年七月に〈講談社ミステリーランド〉叢書から刊行された。
 この叢書は故宇山日出臣(本名・秀雄)氏が企画されたもので、二〇〇二年六月に電話で依頼を受けた。このときはまだ〈少年少女ミステリー図書館〉という仮称で呼ばれており、「二百〜三百枚のジュヴナイル」「大人にも子どもにも楽しめる本格ミステリ」という依頼内容に、「そんなもの書けるのか?」と恐れをなした記憶がある。
 〆切は二〇〇三年二月、刊行は二〇〇三年一〇月の第二回配本と、やや変則的なスケジュールだったのは、宇山氏がわたしの原稿をもとに叢書のフォーマットを固めようという腹づもりだったからではないかと思う。実際、原稿を渡したあとも、イラストレーター(MAYAMAXX氏)を推薦させられたり、あとがきも早く欲しいと催促されたり、早め早めの進行で事は進んだ。
 実際には本書は第一回配本として刊行されたわけだが、これはわたしのけなげな努力が報われたからではなく、某先生が原稿を落としたからだとあとで知った。
 というわけで、本書は“伝説の編集者”宇山氏とがっぷり四つに組ませていただいたわたしの唯一の著書であり、その意味でも印象深い作品である。
 原稿を送付したあと、
「今日、京都から戻ってきたところなんですが、会社に着いたら、机の上に原稿が燦然と輝いておりました」
 という電話をいただいたことをなつかしく思いだす。

二〇一二年六月


プロフィール 殊能将之(しゅのう・まさゆき) 1964年福井県生まれ。1999年『ハサミ男』で、第13回メフィスト賞を受賞しデビュー。その後『美濃牛』『黒い仏』『鏡の中は日曜日』『樒/榁』などを発表。

担当者コメント

メフィスト賞『ハサミ男』でミステリ界に衝撃をもたらし、その後も意欲作を発表し続けてきた殊能将之さんの、久しぶりのノベルスが登場です! 団地に住む少年たちの前に突如現れた、恐ろしい“王様”の正体は!? 残酷な世界に立ち向かう少年たちの未来はどこへ向かうのか!?
静かに迫り来る恐怖と謎を描いた殊能ワールド、どうかお楽しみください!

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既刊紹介+著者のことば

『ハサミ男』

『ハサミ男』
講談社ノベルス
講談社文庫
連続美少女殺人事件。死体ののどに突き立てられたハサミ。その残虐性から「ハサミ男」と名づけられたシリアル・キラーが、自分の犯行を真似た第3の殺人の真犯人を捜す羽目に……。殺人願望と自殺願望という狂気の狭間から、冷徹な目で、人の心の闇を抉るハサミ男。端麗なる謎! ミステリ界に妖しい涼風が!

Coment

この小説を執筆中、ワープロに向かう前にはいつも、一種の儀式のように、XTCの<Scissor Man>と<Complicated Game>を聴いていました。合計100回以上は聴いたはずです。それなのに、どうしてこんな話になってしまったんでしょうか。

『美濃牛』

『美濃牛』
講談社ノベルス
講談社文庫
「鬼の頭(こうべ)を切り落とし……」首なし死体に始まり、名門一族が次々と殺されていく。あたかも伝承されたわらべ唄の如く。

Coment

たくさん引用が出てきますが、全部ちゃんと読んでいるなんて思わないでください。著者はとても不勉強な人間です。この本の印税が入ったら、飛騨牛料理を食べに行こうと思っています。

『黒い仏』

『黒い仏』
講談社ノベルス
講談社文庫
9世紀、天台僧が唐から持ち帰ろうとした秘宝とは。助手の徐彬(アントニオ)を連れて石動戯作(いするぎぎさく)が調査に行った寺には、顔の削り取られた奇妙な本尊が。指紋ひとつ残されていない部屋で発見された身元不明の死体と黒い数珠。事件はあっという間に石動を巻き込んで恐るべき終局へ。ついにミステリは究極の名探偵を現出せしめた!

Coment

わたしは旅行が大嫌いなので、次作は家から一歩も外に出ずに書ける話を考えようと思っています。

『鏡の中は日曜日』

『鏡の中は日曜日』
講談社ノベルス
講談社文庫
梵貝荘(ぼんばいそう)と呼ばれる法螺貝(ほらがい)様の異形の館。マラルメを研究する館の主・瑞門龍司郎(ずいもんりゅうしろう)が主催する「火曜会」の夜、奇妙な殺人事件が発生する。事件は、名探偵の活躍により解決するが、年を経た後、再調査が現代の名探偵・石動戯作(いするぎぎさく)に持ち込まれる。時間を超え交錯する謎。まさに完璧な本格ミステリ。文庫版は続編「樒(しきみ)/榁(むろ)」を同時収録。

Coment

家から一歩も出ずに書ける話にするつもりが、またもや取材旅行に出かけるはめになりました。初夏の鎌倉は、とてもすばらしかったです。

『樒/榁』

『樒/榁』
講談社ノベルス 天狗を目撃したという宮司がいる荒廃した寺で、御神体の石斧が盗まれた。問題の“天狗の斧”が発見されたのは完全な密室の中。おびただしい数の武具を飾る旅館の部屋の扉を破ると、頭を割られた死体と脅迫状が。悲運の天皇、崇徳院(すとくいん)を巡る旅の果てに事件と出遭ったかの名探偵の推理は。謎と企みに満ちた本格!

Coment

「取材費を使って温泉に行こう」という不届きな魂胆から執筆いたしました。

『キマイラの新しい城』

『キマイラの新しい城』
講談社ノベルス
講談社文庫
「私を殺した犯人は誰なんだ?」欧州の古城を移築して作られたテーマパークの社長が、古城の領主の霊に取り憑かれた!? 750年前の事件の現場状況も容疑者も全て社長の頭の中にしかない。依頼を受けた石動戯作(いするぎぎさく)も中世の人間のふりをして謎に迫る。さらに、現実にも殺人が! 石動はふたつの事件を解明できるか!?

Coment

取材の名目でエジプトに旅行し、鳩肉とターメイヤを食べようかと考えましたが、お金がないので断念しました。

※著者の言葉は刊行時、ノベルスのカバー袖に掲載されていたものです。

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8月の新刊