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『奇面館の殺人』綾辻行人|講談社ノベルス

講談社ノベルス

担当者コメント

いつも「館」シリーズには驚かされてばかりです。
これまで読んできた世界が、ラストですべてひっくり返されるのですから。しかもそれが毎回。
『奇面館の殺人』もまたとびきりの驚きに満ちた本格ミステリであることを保証します。なにせ「前代未聞の異様な状況」なのですから。それでいて新本格の「直球勝負」ともいえる作品。「吹雪の山荘」という設定からして、ワクワクするではありませんか。謎解きに関わるゆえ、これ以上詳しくいえないのが、はがゆいですね。
執筆のあいだ、綾辻さんが神経を使っておられることのひとつは「この一行、この一句を書くと、みんなにわかってしまうのではないか」ということ。聞かれて僕の答えはいつも「わかりっこありませんよ」でした。ぜひみなさんの目で確かめていただきたいと思います。

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一問一答

『奇面館の殺人』お疲れ様でした。まずは、書き終わった、その瞬間のお気持ちは。

ちゃんと書き上げられて良かった……。

今回の作品で一番苦労した点は何ですか。

ありえない設定・展開等を「ありえない!」と思ってしまう分別との闘い。

そして、この作品の読みどころは。

たぶん前例のない異様なシチュエーションでの推理劇である、というところ。
ご存じの方は「懐かしの新本格」として楽しんでいただければ、と。
ご存じじゃない方ももちろん、楽しめるはず、です。

登場人物の推理作家・鹿谷門実のモデルは綾辻さんなのでしょうか。

違います(笑)。

驚愕のトリックと一行一句たりとも気を抜けない、緻密な構成と文章表現。制作過程を少しだけ教えて下さい! まず、トリックはどのようなシチュエーションで思いつかれるのでしょうか。

いろいろ。ですが、関係のないことをしているときにふと、という場合が多いかも。

今回の『奇面館の殺人』の着想のきっかけは。

おおもとまで遡れば、幼少のころに読んだ楳図かずお先生の漫画『笑い仮面』なのですが。
いわゆる「本格ミステリ」に対してかつて、「登場人物が記号でしかない」「顔が見えない」というふうな批判がよくされたので、「だったらいっそ全員に仮面を被らせてしまおうか」みたいな動機もあったかな。

構成はどのように練るのでしょうか。具体的な作業方法などはありますか。

手書きの専用ノートを用意するところから始まります。
あとはひたすら、ああでもないこうでもないと苦心して、粘土細工みたいにして形を作っていく感じ。

綾辻さんが執筆中に(もし音楽を聴かれるなら)聴く音楽は何ですか。
また、カラオケで歌う「十八番」の曲を教えて下さい。

無音の場合がいちばん多いのですが、何か流すとしたら……ホラー映画のサントラとか。
作品によっては、中谷美紀のアルバム『食物連鎖』ばかり、ということもありました。
カラオケでは……うーん、たとえばEGO-WRAPPIN'の「老いぼれ犬のセレナーデ」が得意だったり。

執筆スタイルを教えて下さい。また、執筆中、かかせないアイテムはありますか。

煙草は不可欠(銘柄はセブンスターひと筋)。次がコーヒー。その次くらいに「外が暗いこと」。

「館」シリーズは全10作、ということですが、『奇面館の殺人』で9作目。本当にあと1作なのでしょうか。

とりあえず、そのつもりでいます。

因みに『奇面館の殺人』前に読んでおいたほうがいい「館」作品はありますか。

これが最初でも大丈夫、という作品になっているはずですが。
しいて云うなら、『十角館の殺人』と『迷路館の殺人』でしょうか。

ミステリ作家になろうと思ったきっかけになった作家、作品は。

江戸川乱歩、「少年探偵団」シリーズ。
エラリイ・クイーン、悲劇4部作および「国名」シリーズ。

綾辻さんに憧れて作家を目指した若い作家さんがたくさんいます。綾辻さんにとっての「憧れ」の作家はどなたでしょう。

横溝正史、かなあ。

今後の執筆予定を、お話しいただける範囲で教えて下さい。

次は角川書店で『Another』的な長編を、という予定です。
「館」シリーズの次作は、まあいずれ。

読者の方々に、一言。

「うつしよ」をいっとき忘れて「よるの夢」を楽しんでいただければ、と願います。

著者プロフィール

1960年、京都府生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学院博士後期課程修了。在学中は京大推理小説研究会に所属する。87年、『十角館の殺人』でデビュー、“新本格ムーヴメント”の嚆矢となる。92年、『時計館の殺人』で第45回日本推理作家協会賞を受賞。『水車館の殺人』『迷路館の殺人』など「館」シリーズと呼ばれる一連の長編は、現代本格ミステリを牽引しつづけている。2004年には2500枚超の集大成的傑作『暗黒館の殺人(上・下)』を発表。本書『奇面館の殺人』は、講談社ノベルスでは『黒猫館の殺人』以来20年ぶりの書き下ろしとなる。ほかに『緋色の囁き』『霧越邸殺人事件』『深泥丘奇談』『Another アナザー』など著書多数。

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綾辻行人「館」シリーズの歴史
1960年京都府に生まれる。
1979年京都大学入学。京大推理小説研究会入会。
1983年『追悼の島 ―十角館殺人事件―』が第29回江戸川乱歩賞の一次予選通過。
1987年『十角館の殺人』(「追悼の島」を改稿)を上梓。鮮烈なデビューとなる。
1988年『水車館の殺人』『迷路館の殺人』上梓。「新本格」ブームを巻き起こしていく。
1989年『人形館の殺人』を刊行。
1991年『時計館の殺人』を刊行。
1992年『黒猫館の殺人』を刊行。
『時計館の殺人』で第45回日本推理作家協会賞を受賞。
2004年2000年より『イン・ポケット』で連載されていた『暗黒館の殺人』を上下巻で刊行。
2006年『びっくり館の殺人』をミステリーランドより刊行。
2012年1月5日
『奇面館の殺人』 講談社ノベルスより刊行。
ますます広がる綾辻行人の世界

★『Another』(上・下)角川文庫より発売中
★『深泥丘奇談』MF文庫ダ・ヴィンチより発売中
★『殺人鬼 ――逆襲篇』 2012年2月に角川文庫より発売予定
★『時計館の殺人<新装改訂版>』2012年3月に講談社文庫より発売予定
★『綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー(3)』2012年4月に講談社より発売予定
★TVアニメ『Another』2012年1〜3月放映予定(全12話)
★映画『Another アナザー』2012年夏 全国東宝系で公開予定

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既刊リスト

「館」シリーズ

  • 『十角館の殺人』

    『十角館の殺人』
    本格推理に大トリックがまだ残っていた!! 講談社ノベルス
    講談社文庫(新装改訂版)
    YA! ENTERTAINMENT

  • 『水車館の殺人』

    『水車館の殺人』
    驚愕の最終章が読者を待ちうける! 講談社ノベルス
    講談社文庫(新装改訂版)
    YA! ENTERTAINMENT

  • 『迷路館の殺人』

    『迷路館の殺人』
    この構成(アイデア)、この仕掛け(トリック)、この驚愕(ミステリー)。 講談社ノベルス
    講談社文庫(新装改訂版)

  • 『人形館の殺人』

    『人形館の殺人』
    ミステリー界に激震!
    またまた放つ異色作!
    講談社ノベルス
    講談社文庫(新装改訂版)

  • 『時計館の殺人』

    『時計館の殺人』
    神か悪魔か綾辻行人か!
    またまた驚愕の最終章。
    講談社ノベルス
    講談社文庫

  • 『黒猫館の殺人』

    『黒猫館の殺人』
    絶好調「館」シリーズ、
    驚天動地の第六弾!
    講談社ノベルス
    講談社文庫

  • 『暗黒館の殺人』

    『暗黒館の殺人』
    シリーズ最大・最深・最驚の「館」、ここに落成!
    ミステリ作家・綾辻行人の全てがここに結実!
    講談社ノベルス
    (上)(下)
    講談社文庫
    (一)(二)(三)(四)

  • 『びっくり館の殺人』

    『びっくり館の殺人』
    十年前のクリスマスの夜──。
    その屋敷のその密室でぼくたちは何を見たのか?
    講談社ノベルス
    講談社文庫
    ミステリーランド



その他

  • 『緋色の囁き』

    『緋色の囁き』
    講談社文庫

  • 『暗闇の囁き』

    『暗闇の囁き』
    謎めいて美しい兄弟を取り巻く死。長編推理。
    女性家庭教師が黒髪を、従兄とその母は眼と爪を奪われて死んだ……。
    講談社文庫

  • 『黄昏の囁き』

    『黄昏の囁き』
    「ね、遊んでよ」謎の言葉に殺人鬼の影が!
    “囁き”シリーズ待望の第3弾!甦った幼き日の恐るべき記憶とは?
    講談社文庫

  • 『どんどん橋、落ちた』

    『どんどん橋、落ちた』
    無理、無理……。犯人を当てるなんて!
    全神経を集中して推理しても、犯人を決められない究極の中短編集。
    講談社文庫

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1月の新刊