もうひとつのあとがき、というか、宣伝のためのあらすじと、どこからパクったかを中心とする自作解説
本のあとがきには、メトロン星人詐欺にひっかかった話を書いてしまったので、こちらには、いつものようなあとがきを書くことにする。
「一枚のとんかつ」
〈あらすじ〉
迷宮入りと思われた、〈いなかっぺ大将〉の数え唄に見立てた連続殺人事件。しかし、とんかつにかかったソースから、犯人のアリバイは……。
〈解説〉
漫画『鉄子の旅』の時刻表のアイディアを借用させていただいてます。でも、あちらには殺人もとんかつも出てこないので、まあ、いいやということで入れさせていただきました。オマージュというかリスペクトですのでどうかひとつ……。
「大江戸線5分30秒の壁」
〈あらすじ〉
大江戸線の六本木駅で殺人が行われたとき、容疑者はふたつ隣の赤羽橋にいた。5分30秒の壁は破れるのか?
〈解説〉
『ブラタモリ』で麻布界隈を歩いていたとき、かわいいのかかわいくないのかビミョーな女子アナウンサーが、慶応大学在学中、よく麻布ラーメンを食べに通ったと話していたので、ラーメン好きの私も行ってみると、ことのほかおいしかった。その帰り、麻布十番駅から大江戸線に乗ったときに、この話を思いついた。
トリックが実行可能かどうか、赤羽橋と麻布十番のあいだを全速力で走っているとき、「おれはいったいなぜこんなことをしてるんだろう?」と死にたくなった……。
「新×××殺人事件」
〈あらすじ〉
殺人現場には、5本のバイブレーターが遺されていた。そのダイイング・メッセージの意味とは?
〈解説〉
事件はまったくちがうものの、「ちんこ殺人事件」の続編にあたる作品である。昔から映画の続編はつまらないとよく言うが、この作品も例外ではない。「1」と「2」の差ということで言えば、『ジョーズ』と『ジョーズ2』の差ぐらいあるだろう。
「犯行の印」
〈あらすじ〉
小池さんはラーメンが大きらいだったのに、なぜ刑事から「ラーメン、お好きなんですか?」ときかれたのか?
〈解説〉
書く直前になって、犯人を小池さんにすればいいと気づいた。おかげで、少しはマシになったと思う。大学時代、パーマをかけたとたん、みんなからラーメン小池と呼ばれるようになった友人に感謝である。
「聖職」
〈あらすじ〉
密かに想いを寄せる同僚の女教師が殺人の容疑で逮捕された。彼女のアリバイを証明できるのは、彼ひとりだったが……。
〈解説〉
天才脚本家橋本忍の『黒い画集・あるサラリーマンの証言』を、途中まで「タルいなあ。これは、橋本忍にしては、めずらしく失敗作だな」と思って見ていたら、最後の最後でやられたと思った。やっぱり橋本忍は天才である。この作品は、その映画からパクった。ただし、ラストの衝撃度は、あちらが95点とすれば、こちらは2点である。
「ひとりジェンカ」
〈あらすじ〉
中国への転勤が決まった宴会部長には、ひとつだけ心配事があった。いままで彼がとりしきってきた送別会は、いったいだれがやってくれるのだろう? ところが、何の連絡もないまま、ついに出発の日がやってきた。彼はひとり寂しくジェンカを歌い踊る……。
〈解説〉
『ミステリーゾーン』の海外のバッタもんみたいな作品と、ジョン・コリアの「夢判断」と、坂本九の名曲ジェンカをパクって、三で割ったような作品。それにしても、永六輔作詞によるジェンカは、なんて脳天気な歌なのだろう。私も、何かつらいことがあったときには、ひとりで陽気にジェンカを歌い踊るような人間でありたいと思う。
「修学旅行の悪夢」
〈あらすじ〉
修学旅行先の上海で、彼は筆おろしをするつもりだった。しかし、怪しいポン引きに連れていかれたところは……。
〈解説〉
ザッカー兄弟の『トップ・シークレット』の夢に関するエピソードをパクったのだが、あちらのほうが断然おもしろい。どんなエピソードか紹介したいところだが、毎日37度を超える猛暑がつづいているので、そんな気力はない。おそらく、この作品と「新×××殺人事件」がいちばん人気がないはずである。数合わせのための作品と考えてもらって差し支えない。
「翼をください」
〈あらすじ〉
9歳の少年はなぜ、女性の下着を白と黒ばかり三百枚も盗んだのか?
〈解説〉
『人志松本のゆるせない話』で、たしか松っちゃんが「盗まれた何百枚もの下着を体育館に並べて、ニュースで流す意味がわからない」と言っていたが、まったくの同感である。いまだに被害者のプライバシーも考えずに、ニュースで平気で下着を見せているが、その中に、名前が書かれた染みつきパンティがあったら、どうするつもりなのだろう。
この作品は、ある有名CMをそのままパクったので、オチは見え見えである。
「追われる男」
〈あらすじ〉
女芸人は、映画のスクリーンから抜け出てきた男と恋に落ちた。はたして、これはドッキリなのか、それとも彼は本当に映画の中の登場人物なのか?
〈解説〉
もうおわかりと思うが、ウッディ・アレンの『カイロの紫のバラ』のパクりである。どうすれば、パクったことがうまくバレないようにできるだろうと考えながら、テレビのヴァラエティ番組を見ていたら、ヒロインを女芸人にすればいいということに気づいた。だれをモデルにしたかは、読めば一発でわかる。
「恋愛小説はお好き?」
〈あらすじ〉
入院中の姪のために恋愛小説を買いに本屋に訪れた漫画家志望の青年は、美人の書店員に恋をしてしまう。彼女をモデルにして描いた漫画は見事佳作に。彼はその作品の載った雑誌を持って、本屋に向かうが……。
〈解説〉
書店まわりをしているとき、いつもお世話になっている、『ハチクロ』のはぐちゃんと同じ苗字の男性の書店員さんが、病気で寝ている子供のために、おもしろい本を教えてほしいと言ってきた女性に、親切に教えてあげている光景を目撃して、こんなドラマみたいなことが実際にあるのかとちょっと感動して、この話を書いた。
ただ、ヒロインの書店員が青年におもしろい恋愛小説を教えようにも、私は恋愛小説をほとんど読んだことがないので、困り果ててしまった。そこで、ヒロインは女のくせに、ふだんミステリーしか読まないという無茶な設定にした。
ラストは、拙作『赤い糸』のPOPが立っていたというオチにしようとよっぽど思ったのだが、顰蹙を買うことはまちがいないので、すんでのところで思いとどまった。
「琥珀の中のコートダジュール」
〈あらすじ〉
66歳の美鈴には、ひとつだけ後悔していることがあった。小学生のころ、クラスメイトの男子に「好き」と言えなかったことだ。ひさしぶりに彼女がその小学校を訪れると、そこは約六十年前の世界だった……。
〈解説〉
タイトルを先に決めてからストーリーを考えることはめったにないのだが(そんなことをする作家はクズである)、これはめずらしくタイトルが先に決まっていた。『Xファイル』の「機械の中のゴースト」というタイトルの語呂がいいと思っていたので(いまとなっては、なぜそう思ったのか、理解に苦しむが……)、それをもじった。当初のタイトルは「琥珀の中のダルエスサラーム」だったのだが、タンザニアに関する情報は、いつも先行するだけで逃げ切れないイカンガーくらいしか知らなかったので、「琥珀の中のコートジボアール」にしようかと思ったのだが、コートジボアールに関する情報は、闘莉王に腕を折られたドログバくらいしか知らなかったので、最終的にコートダジュールに決め、ヒロインの相手役を強引にフランス人にした。
先日、メフィスト賞作家の集まりで、新人の方がシャーロック・ホームズ像(例のベーカー街でおみやげとして売ってるやつ)をもらっていたので、私もどさくさにまぎれ、受賞から十数年もたって、ようやくもらうことができた。オスカー像くらいの大きさを想像していたのだが、5センチほどだった。私は、もうホームズ像をもらうことはできないと思っていたので、いつかベストセラー作家になったときに、ロンドンに取材旅行に行き、ベーカー街で、同行した編集者に「へえー、こんなの売ってるんだ。記念にひとつ買っていこうかな」といやみったらしく言ってやるという遠大な計画を立てていたのだが、ベストセラー作家にはなれそうにないので、これでよかったのかもしれない。
その飲み会の席で、私が「一回寝返りを打つのに30ページもかける『失われた時を求めて』を読むやつなんているのか?」という話をしていたら、近くの席に坐っていた浅暮さん、辻村さん、深水さん (受賞順)の三人がなんと『失われた時を求めて』を読んでいた。そこで、私は思った。やはり作家というものは、『失われた時を求めて』を読んでいるような人間しかなってはいけないのだ。
友人から借りた島田荘司さんのサイン本を、のり塩のポテトチップスを食べながら読んでいたら、本にたくさんのりがついてしまったので、「島田さんのサインと私がつけたのりのダブルネームになる」と言って本を返したら、友人はひどく怒っていた。所詮、私はその程度の作家なのだ。
それから、毎度ご好評いただいている著者近影の写真だが、私が薔薇に囲まれて写っているのは、家のデジカメが壊れ、100円ショップのプリクラで撮影したためで、とくに意味はない。
あと、四年前のサッカーのワールドカップの際、行きつけのDVD屋で、日本が勝った試合の翌日は、エロDVDが全品20パーセント引きだということをすっかり忘れていた。そのことに気づいたのは、パラグアイ戦の前日で、日本が見事初のベスト8に入ったおりには、エロDVDが全品30パーセント引きだったのに、おいッ、駒野、てめえ、いったいどうしてくれるんだッ!!