「フランク・ロイド・ライトの設計で知られるかつてのホテル、創業明治二十三年の帝国ホテルとしては二代目の建築は、一九六八年に惜しまれながら解体され、愛知県犬山の明治村にわずかに玄関部分を残している。現在日比谷の帝国ホテル内で、唯一ライトの意匠をオリジナルで見ることのできるのがここだ。鉤の手形に奥の深いバーの、最奥の壁。ライト・デザインの特徴である、円と直線を用いた幾何学的な壁面装飾がここに再利用されて、鈍金と茶や灰緑のいまなお美しい色彩を見せている。」 ――『美貌の帳』より――