PROFILE
木原浩勝(きはら・ひろかつ)
1960年兵庫県生まれ。
アニメーション制作会社・トップクラフト、パンメディア、スタジオジブリに所属。
『天空の城ラピュタ』、『となりのトトロ』、『魔女の宅急便』などの制作に関わる。
1990年『新・耳・袋』で作家デビュー。
以来、「新耳袋」、「九十九怪談」、「隣之怪」、「現世怪談」シリーズ、『禁忌楼』など怪談作品を次々発表。怪談トークライブやラジオ番組も好評を博す。
これまで関わった作品に『空想科学読本』、『このマンガがすごい!』、『いつまでもデブと思うなよ』、『怪獣VOW』、『怪談四代記 八雲のいたずら』など。
また2016年に発表した『もう一つの「バルス」-宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代-』が話題となり、欧米を中心に世界各国から日本のアニメやスタジオジブリに関する講演の依頼が殺到している。
『ふたりのトトロ -宮崎駿と
『となりのトトロ』の時代ー』
著者:木原浩勝
定価:本体1,500円(税別)
宮崎さん大ピンチ、ジブリ残念伝説!
サツキとメイ誕生の秘密。
ネコバスにモデルがいた⁉
スタッフ驚愕、超難度動画はどのシーン?
前代未聞、制作中なのに思い出作りキャンプ⁉
一歩間違えば、『となりのネコバス』⁉
世界初公開、幻のアニメ企画と近藤勝也氏による幻のキャラクターデザイン!">
2018年の今年は、映画『となりのトトロ』公開30周年の記念すべき年にあたります。
現在もテレビで放送される度に高視聴率を上げる『トトロ』ですが、実のところこれほど愛される作品であるにもかかわらず、その制作の実情が知られることはほとんどありませんでした。
本書『ふたりのトトロ ―宮崎駿と『となりのトトロ』の時代―』は、この点を記録として残そうと思い立って書き著したものです。おそらく著者である私は、世間的に怪談の人で知られていると思います。その私が何故本書が書けたのか? それは今から30年前、宮崎駿監督からの要望で『トトロ』の制作デスクに抜擢されたからです。おかげで大変な責任と苦労を背負うことになりましたが、30年後の視点からいって実に楽しく、幾つもの奇跡のような幸運に恵まれた仕事であったと思っています。
この30周年の年、私はアメリカのボストン、ワシントンD.C.、国立議会図書館、カナダのモントリオールで『となりのトトロ』の特別講演をさせて頂きました。驚くべきことに、その人気っぷりは、ひょっとすると日本国内を上回っているかもしれないと感じるほどの熱烈な歓迎を受けたのです。ことに、この講演テーマのお陰で、国立議会図書館の壇上に立った最初の日本人となれたのです。またこの講演によって、ワシントン・ポストにも取り上げて頂くという栄誉をいただきました。
本書が出来上がったからこそ、しみじみと思うのです。これほど世界的に愛されている、おそらく日本を代表するアニメーションと言っても過言でない『となりのトトロ』が、これほどまでに作品以外のことは何も知られていないということを……。それだけに、本書の内容のほとんどは驚きをもって読んでいただけるものと思っています。
ですが私が何より、書き残せて良かったと思う点が2つ。1つは第1章の「トトロ前夜」です。この章で初めて、『天空の城ラピュタ』が公開された1986年8月2日から『となりのトトロ』公式制作開始時の1987年4月1日までの、8ヵ月あいた空白期間に何があったかを書き残せたからです。2つ目は今年4月5日に亡くなられた高畑勲監督への追悼文が残せたことです。この中で初めて解き明かせたと思える事柄を書きました。それは、『となりのトトロ』といえば誰もが思い浮かべるあのトトロと謎の少女が並んでいるポスターの秘密です。おそらくこの文章を目にした人は、「謎の少女? メイでしょ? サツキでしょ?」とおっしゃられると思います。果たしてそうなのでしょうか。
私も含めて、この謎の絵の答えだと思えることに気付いたのは、公開30年後の本書を書き上げた後だったのです。
どうか興味をそそられた方は、本書『ふたりのトトロ』を是非一読していただければと思います。
9月14日には『もう一つの「バルス」 ―宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代―』が文庫化されます。それに合わせて5つのエピソードを書き加えた他、文庫版特別章として「その後の「ラピュタ」」を書き下ろした40ページに及ぶ増補改訂版としました。
実はこの『もう一つの「バルス」』の特別章と『ふたりのトトロ』のプロローグや第1章とは補完関係になるよう工夫して書きました。本としては別々ですが、もちろん作品としてはもっと別々ですが、しかしスタジオジブリという会社の業務、あるいは歴史としては1本の糸としてしっかりと結びついているからです。
ですので、どうか単行本『ふたりのトトロ』と文庫版『もう一つの「バルス」』を合わせて読んでいただければより良く楽しんでいただけるのではないかと思います。
この2冊を読んでいただければ、両作品が1000倍面白くなると自負しています。
木原浩勝
『となりのトトロ』公開30周年記念出版。
スタジオジブリの制作現場で宮崎駿監督の間近にいて、深く関わった木原浩勝さんの「ジブリ語り」第2弾です。
今年8月の16回目のテレビ放送でも高視聴率だったこの作品、世界各国でも大人気だってご存知でしたか? 世界のアニメランキングではいつも上位にあげられる作品で、木原さんには毎年、世界各地から講演オファーが殺到。今年もボストン、モントリオール、ワシントンD.C.で制作秘話が語られました。(ワシントンD.C.の国立議会図書館における日本人初の講演者となり、ワシントン・ポストから取材も!)
大きな会場でも満員札止めになるほどのトトロ人気に、講演後のスタンディング・オベーション! 世界のファンたちの心を射止めたエピソードや考察がこの一冊に詰まっています。
宮崎駿監督と木原さんの二人からスタートしたトトロは、果たしてどんなドラマの中で出来上がっていくのか? 初めて明らかとなる宮崎さんの素顔や情熱のエピソードは感動そのもの! さらにはトトロ都市伝説についても触れられています。トトロファン、ジブリファンなら見逃すことができない一冊と自信をもってオススメいたします!
さらには『増補改訂版 もう一つの「バルス」ー宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代ー』が9月14日に講談社文庫より発売となります。2年前に刊行された単行本に新たに5つエピソードと特別章や巻末資料を追加。ラピュタが1000倍楽しくなる一冊もぜひ!
「バルス」に宮崎駿監督が込めた意味とは!?
優れた才能は言葉を発明する、そう思わされることがたびたびある。
「逆ギレ」という言葉は松本人志氏の発明だし、「バツイチ」を使ったのは明石家さんま氏だという。「滅びの言葉」と映画の中で語られるラピュタ語「バルス」。Twitterのバルス祭りでも知られ、さらには安保法案へのデモの際に有名な脳科学者が国会に向かって叫んだことも有名なエピソードだ。「バルス」はもはや一般語だと言っていいだろう。
この言葉が登場した名作『天空の城ラピュタ』は、スタジオジブリ創立第一作となる記念すべき作品だ。
本書の著者・木原さんは、「宮崎駿監督と仕事がしたい」という思いから、創設されたばかりのスタジオジブリに飛び込んだ。当時から、宮崎監督の仕事の細やかさ、妥協を許さないその制作過程は、アニメーションの世界では知らぬ者はいなかった。
「木原君、この作品は失敗できないんです」
制作過程にあって、宮崎監督はそう呟き続けていたのだという。失敗すれば次作はない。その覚悟の中で、宮崎監督、そしてスタッフたちはどう試行錯誤し、この名作を作り上げたのか?
本書で語られる、その創作にはさまざまな格闘があった。例を挙げれば、
・ポムじいさんはなぜラピュタ人や飛行石のことを知っていたのか?
・ドーラ一家の乗るフラップターという乗り物の発明者は誰なのか?
・ムスカ大佐は、誰の声なのか?
この本を読むと、『天空の城ラピュタ』には、画面の外側に、もう一つの知られざるストーリーが存在しているように思えるほど細やかな工夫が施されていることがわかる。
さらには、手に汗握る時間との闘い。映画が完成したのは実に公開の10日前だったという! 制作にたずさわるすべての人たちが、まさに命を削って作り上げた名作映画だという緊迫感が本書から伝わってくる。
当時、アニメーションの現場では、制作に使用された絵コンテやさまざまな資料は、使用後、破棄されていたのだという。しかし、木原さんは本作品への憧憬から、これらの資料をできるだけ保管し、手元に置いていた。
今回の文庫化では、新たに発見された資料を基に、5つの新エピソード、そして特別章を加筆し、「バルス」という言葉のルーツにまで言及している。
「バルス」準備稿では、この言葉に宮崎監督が日本語の意味を添えて書いていた!
都市伝説とすらいえるようなさまざまな憶測が語られる、バルスの意味。それを知りたい方は、ぜひ本書を読んでもらいたい。映画館、DVD、テレビ放送で何度も観ているかもしれない『天空の城ラピュタ』。しかし、本書を読むといままで知らなかった『ラピュタ』がそこに見えてくる!